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原油CFDの鞘滑り取りでコンタンゴを収益化する

2020/03/28

古くから知られた利殖ノウハウの一つとして「鞘滑り取り(さやすべりとり)」というものがあります(ローリング[Rolling]ともいいます)。簡単に言うと「順鞘の先物は割高なので売りが有利。だから順鞘時に売って長期間ほったらかしにして、順鞘による減価を時間をかけて収益化する」という技法です。多少値上がりしても資金不足にならないような資金配分で売るのがポイントで、資金が少ない人が過大な数量を売るとたちまち追証攻めにあって破綻してしまうので、簡単に見えて奥の深い手法です。価格が1.5倍になっても鼻歌を歌える程度の資金配分で取り組むべき手法と言えるでしょう(下に出ている例はうまく行った例であり、実際は失敗して酷い目に遭う可能性もある戦略です!注意!)。なお、鞘滑り取りは、世界三大利殖の一つで、残り二つは鞘取り、オプションの売りです。

原油CFDの場合は取引会社が自動的にロールオーバーしてくれる仕組みになっています(一部例外あり)。WTI原油先物は、多くの期間で順鞘(コンタンゴ)のことが多いため、原油CFDを控えめに売って長期間ほったらかしにすることで、手間をかけずに鞘滑り取りを実行することができます。もちろん、順鞘が潰れて逆鞘(バックワーディション)になる可能性も否定できませんが、WTI原油先物市場に突っ込まれた投機資金のロールオーバー時の挙動を考えると逆鞘化する可能性よりコンタンゴが継続する可能性のほうが高いであろうと筆者は考えています。

実例を見てみましょう。下図は2008年に原油が暴騰してから暴落したときのチャートです。2009年の最初の日に原油CFDを46.34ドルで追撃売りを行い(逆張りで買いたくなるのを我慢して逆に売る)、4月末に51.12ドルで買い戻したとしましょう。
WTIつなぎ足チャート(2008年1月~2009年12月)

拡大図は下図となります。46.34ドルで売って、51.12ドルで買い戻すので、損に決まってるだろ?と思うでしょ。ところが、毎月のロールオーバー時の「価格調整額」を考慮すると話が変わってきます。

WTIつなぎ足チャート(2009年1月~2009年4月のみ)

この時期は大きな順鞘(コンタンゴ)でしたので原油CFDを売り建てしていた人は、ロールオーバーごとにけっこうな額の価格調整額を受け取れた計算になります。順鞘時のロールオーバーでは「期近限月を安く買い戻し、一つ先の限月を高く売り直す」というオペレーションが行われます(原油CFDを買ってる人は全く逆となります)。したがって大きな順鞘が続いている時期に原油CFDを売っていると、毎月毎月、価格調整額を受け取れるので、値上がり幅が「価格調整額の受け取り総額」より小さければ利益を得ることができるわけです。下図はロールオーバーによって対応する先物の限月が変わっていく様子を別の色で表示したものです。安く売って高く買いなおしてる様子が分かりますよね。千切れている差額分が価格調整額に相当します。想像を遥かに超えるありえないくらいの段差があることがわかります。WTI原油先物は、現物決済の受け渡し場所であるオクラホマ州クッシングの在庫状況によっては投売り状態に近くなることがあります。このためWTI原油をトレードする人はクッシング在庫は要チェックです。

原油CFDのロールオーバーの様子(2009年1月~2009年4月)

次に示した図は、ロールオーバー時の価格調整額を補正したときのチャートです。期近原油先物を繋いだチャートは「つなぎ足」などと呼ばれますが、ロールオーバー時の差を修正したチャートは「修正つなぎ足」と呼ばれます。実質的な損益が分かるチャートは修正つなぎ足のほうです(上図の色違いのチャートを繋げるときに、価格調整額分ずらして作成したチャート)。世の中一般のチャートは、単なる「つなぎ足」で表示されていることが多いです。このため先物相場の仕組みをよく知らない人は、つなぎ足だけのチャートを見て「原油が上がれば儲かる」と単純に考えて原油CFDとか原油ETFをナンピン買いしてしまうわけですが、実際には毎月のロールオーバーでコストがかかるため「上がってるように見えてロールオーバーで損をするのでCFDやETFはサッパリ上がらない」ことがよく起こります。これを逆手にとるのが鞘滑り取りという技法です。

WTI原油つなぎ足と修正つなぎ足の比較(2009年1月~2009年4月)

この期間(2009年1月~4月末)において、ロールオーバー時の順鞘幅の合計は15.75ドルでした(第5営業日の終値でロールオーバーしたとして計算。ロール日を多少ずらしてもたいして変わりません)。つまり原油CFDを売っていた人は価格調整額として15.75ドルを受け取っていました。この期間の期近限月の値上がり幅は4.78ドルですから、原油CFDを売っていた人は値上がりによって4.78ドル損をして、価格調整額によって15.75ドル儲かっていたということになります。

ところで、鞘滑り取りという手法は、本来はこのような数ヶ月以下の短期トレードではありません。長期間、ひたすら売りっぱなしにして、順鞘の乗り換え分を地味に積み重ねていく方法です。下図は2008年1月から2016年12月までの長期チャートです。赤線が「期近つなぎ足」、すなわち、皆さんがよく見るチャートです。緑線は「修正つなぎ足」、すなわちロールオーバー時の価格調整分を補正したチャートとなります。
WTI原油つなぎ足と修正つなぎ足の比較(2008年1月~2016年12月)

赤線を見ると、2008年1月に約100ドルで売って2016年末まで粘った場合(途中50ドル逆行する局面があるので耐えるのは無理かもしれないが)、約45ドルの利益に見えますよね。ところが原油CFDを売って放置した人は(鞘滑り取りをしていた人は)、順鞘時のロールオーバー時には価格調整額が受け取れますからそれが積もり積もって、マイナス15ドルまで価格が下がったことと同じ利益を享受できます(緑線を見て下さい)。つまり利幅は115ドルということです。これが鞘滑り取りの威力であり、また、「買ってる人が知らず知らずに大損する」落とし穴でもあります。※逆にCFDを買ってずーっと放置した人は115ドル幅の損となります。

筆者の場合は短期トレード用の口座と、売りっぱなし口座に分けておき、鞘滑り取り用の口座は、低レバでひたすら粘るという感じで運用してます。

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