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クッシング在庫って何?原油価格に影響するの?

2017/04/13

オクラホマ州クッシング市は、アメリカの原油先物市場NYMEXの原油の受け渡し場所です。アメリカは国土が広いため、原油輸送にはパイプラインが広く用いられており原油生産地からの多くのパイプラインがクッシングまで延びています。もちろん、ここが原油の行き着くゴール地点ではなく、シカゴやニューヨークなどの大消費地まで繋がっています。

クッシングの役割

原油先物市場の参加者の行動パターンを考えてみましょう。これにより、クッシングの在庫の多寡が需給を反映する鏡であることが見えてきます。主な参加者は、原油の生産者、需要家、投機家(ファンドも投機家)です。

生産者:今後、値下がりすると考えている原油の生産者がいるとしましょう。この生産者は値下がりリスクをヘッジするために先物市場で先物を売ります。例えば原油先物が50ドルのとき先物を売っておけば、自分が生産している原油価格が40ドルに値下がりしても、先物の下落分が利益になります。つまり自分の生産した原油の現物を40ドルで売り、予め売っておいた先物は買戻し決済をして10ドルを得ます。結局50ドルで売れたことと同じ経済効果を得ます。このように投機ではなくヘッジ目的の先物市場参加者も、重要な市場参加者です。

需要家:生産者から毎月一定量を、そのときの時価で仕入れる契約をしてる需要家がいるとしましょう。この需要家は値上がりリスクをヘッジするため先物市場で先物を買います。例えば原油先物が40ドルのとき先物を買っておけば、その後、現物価格が50ドルに値上がりして仕入れ価格が上がってしまったとしても、予め買ってあった原油先物の値上がり益のおかげで価格ヘッジができます(投資銀行が間に入って「固定価格で仕入れる契約」を結ぶケースもありますが、この場合は、需要家に代わって投資銀行が先物市場でヘッジすることになります)。

投機家:先物を買う人もいれば売る人もいますが、値上がり益または値下がり益を得るのが目的ですから、買った人は売り決済し、売った人は買い決済して、差金決済します。現物の原油を引き取ることはありません(※)。筆者はもちろん投機家であります(笑)。※一部の投資銀行等は現物を引き取って貯蔵した上、値上がり時に売却する行動を行うことがありますが、稀なケースです。

ファンド:原油の値上がりで利益を狙うため、先物を買い持ちしています(ベア型ファンドは逆に売り持ちです)。必ずしも期限が短い限月を買う必要はありませんが、流動性を考慮すると、期限が短い限月の先物を買っているファンドが主流です。このため毎月、期限がくるたびに、期限が短い先物を売り、期限が一つ先の先物を買いなおします(ロールオーバー、限月乗り換え)。ETFの場合は、延々とロールオーバーしてゆきます。現物の原油を引き取ることはありません。1699や1671を買っている方の資金の一部も、こうして運用されています。世界最大の原油ETFのUSOも同様です。

先物価格は現物価格と乖離した値段で勝手に動いているわけではなく密接に結びついています。上に挙げた生産者の例では、生産者は売っておいた先物を買い戻して利益を確定しました。しかし差金決済で利益確定するのではなく現物の原油を渡して決済することも可能です。生産する原油の全量の売り先が決まっているわけではないので、売り先が決まっていない原油は、売り建てた先物を現物渡しという形で決済してしまえば良いわけです。

その先物市場での受け渡し場所がオクラホマ州クッシング市にあるのです。生産地からクッシングまでパイプラインで送油して現物の原油を渡して売り建て玉を決済することができるのです。つまりクッシングの原油在庫が多いときは「売り先が決まっていない原油が多い」ことになります。クッシングの在庫量が多いときは(あるいは在庫が増える速度が速いときは)、原油の売れ行きが悪いということがわかります。一方、在庫が減る速度が速いときは原油の売れ行きが良いことを暗示していますので、在庫水準が高いのにも関わらず買い材料となることがあります。

下図は2008年1月から2016年5月までのEIA(Energy Information Administration)発表のクッシング在庫とWTI原油先物の推移です。クッシング在庫が少ない場合には原油が高くなりやすいことが分かります。現在のクッシング在庫は歴史的な高水準にありますが、石油掘削リグの稼動数が一時期と比べて大きく減少していることから、在庫が減少して行くであろうと見られていますが、そのまま素直に行くかどうかはわかりません

クッシング在庫とWTI原油先物価格の関係(2008年から2016年)

上のチャートに用いたデータから日時要素を取り除き在庫と原油価格の相関図を作成した結果が下図になります。クッシング在庫が40000(x1000バレル)程度の適正水準に戻った場合、原油価格はおおよそ80ドル前後まで戻りそうだということが予想できます。もちろん原油がこのまま一様に減少していくわけではないでしょうから、それほど単純に原油価格が上向くわけではないと思いますが。

クッシング在庫とWTI原油先物価格の相関図

ところで、クッシング在庫の量そのものではなく、在庫が前週から減少したことを材料に原油が買われることがあります。前の週からのクッシング在庫の変動率と、その期間におけるWTI原油先物変動率の関係を調べた結果を下図に示します。残念ながら、ほとんど相関は見られませんでした。EIAが発表する前に民間調査会社ジェンスケープ(Genscape)などが予想値を事前に発表するため、既に先物価格には織り込まれてしまっているようです。個人投資家が入手可能な情報は、プロ投資家が入手する情報よりも遅れています。

クッシング在庫変動率とWTI原油先物価格変動率の関係

クッシングの在庫量は季節的な波もあるので、例年の同時期と比較することで相場が読みやすくなります。以下に1月~12月の在庫量を重ね描きした図を掲載しておきます。

2008年~2012年におけるクッシング原油在庫の季節推移(EIAデータによる)

EIA発表 週間在庫統計 クッシング(2013~2017年比較)

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