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アメリカの原油生産量がようやく減少に転じた

サウジアラビアやロシアの場合は国策として原油生産量をコントロールできますが、米国の場合は民間企業が生産者であるために価格カルテル的な手法(皆で申し合わせて減産)は難しいという問題がありました。しかしながら、さすがに価格下落に耐え切れなくなり多くの民間企業が減産するようになり、ようやく全米合計での原油生産量は減少に転じました。

米国の原油生産量推移

減ったとは言っても、2010年頃と比べて生産量は2倍に増えているわけなので新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による需要減を埋め合わせることができるか疑問なレベルではあります。

WTI原油受け渡し地であるオクラホマ州クッシングの在庫は、まだまだ高水準ですが僅かながら減少に転じたのは原油価格に対しては好材料と言えますね。

クッシング在庫(2020年5月13日発表)

WTI原油先物は一時マイナス価格となるなどの大波乱を演じましたが、そこそこ落ち着きを取り戻しつつあります。下図は過去の暴落と今回の暴落を比較するために作成したチャートですが、日柄的に見ても、そろそろ最悪期を脱したかという感じに見えます。

原油下落の様子。過去との比較

原油先物のフォワードカーブ(期限の短い先物を基準に、期限の長い先物価格を繋いだチャート)を見ると、おそろしいほどの順鞘(コンタンゴ)が縮小してきて、コンタンゴの幅の小さい状態まで回復しているのがわかります。ETF等のロールオーバー時の減価の度合いは今後改善されてゆくと考えられますが、そうは言ってもまだコンタンゴなので長期買い持ちは不利な状況には変わりません。

WTI原油先物のフォワードカーブ

コロナの感染リスクを減らすためには人間に近づかないことが必要です。このため公共交通機関は使わないけれども自動車で移動する、というニーズは確実に存在します。Appleが期間限定で移動傾向レポートを無償で提供しており、これによればアメリカにおける自動車の移動アクティビティは公共交通機関を上回る勢いでけっこう回復していることが確認できます。ちなみに移動傾向レポートはアメリカのみならず世界中の傾向を見ることができるのでいろいろな地名を入れていろいろ試してみると楽しいよ。

原油1バレル(42ガロン)から、ガソリンは19~20ガロン、中間留分(ディーゼル燃料とかヒーティングオイルとかジェット燃料)は11~12ガロン生産されます。つまり、車社会のアメリカにおける原油消費量を予想する上で、ガソリンの需給動向の監視は重要です。

アメリカの移動傾向レポートを見る限りは自動車移動量はかなり回復していることがわかります。じゃあガソリン価格はどうでしょうか。下図は2020年7月限のガソリンクラックスプレッド(ガソリン先物と原油先物の価格差)ですが、クラックがマイナスになるほど叩き売られた後、大幅に戻していることがわかります。つまりガソリンの需要はかなり回復傾向にあることが伺えます。

アメリカのガソリンのクラックスプレッド(7月)

ガソリンの在庫量の推移を見ると確かに減ってますね。

アメリカのガソリン在庫推移(2020年5月13日発表)

しかし、単純に喜ぶことはできません。製油所の稼働率はまだまだかなりの低水準のまま。つまり、ガソリンの需要が回復したというよりも、生産量が減っているので在庫が減ったという見方をしたほうが良いでしょうね。

アメリカの製油所稼働率推移(2020年5月13日発表)

当面は、移動傾向レポート、ガソリン在庫や製油所稼働率、クッシング在庫等から目を離せませんね。筆者は戻り売り目線で見ていたのですが、原油のコンタンゴがかなり縮小してきた様子を見ると売るのは怖くなり、押し目で強気ポジションを作るかどうか思案中です。

WTI原油先物の終値が驚きのマイナス37.63ドルに
OPECが減産してもアメリカが増産するから需給がなかなか均衡しない
クッシング在庫って何?原油価格に影響するの?
原油CFDの鞘滑り取りでコンタンゴを収益化する
原油ETFを長期で買い持ちすると損をする。上がらない理由とは。

FRBによるジャンクボンド購入はシェール企業を延命させ、WTIのコンタンゴを長期化させるのではないか?

OPECプラス(OPECとロシア等)は、2020年5月1日から日量970万バレルの減産に合意していますが、新型コロナウイルスの世界的大流行による需要量の著しい低下を考慮すると、減産量は生ぬるいと言わざるを得ません。しかしながら貯蔵量には限界があるため、生産量はいずれは嫌でも減って行くことが予想されます。

ところで、FRB(米連邦準備制度理事会)が2020年4月9日に投機的格付けの社債(いわゆるジャンクボンド)の購入に踏み切りました。下図はジャンクボンドETFであるHYGと、オイルセクターを除いたジャンクボンドETFのHYXEの比較チャートですが、どちらも大きく反発していることが分かります。これが何を意味するか簡単に言うと、ヤバイ会社の社債をFRBが買うことにしたので、シェール企業を含む財務的にヤバイ会社の資金繰りが助かる、ということになります。

HYGとHYXEの比較

本来は原油価格下落によって資金繰りに困ったシェール企業が倒産や他社に買収される等の形で淘汰されることで生産量が減少するはずだったのに、FRBの施策によって淘汰が進まなくなり、原油生産に歯止めがかからない可能性が出てくるかもしれません。シェール企業が沢山倒産すると今以上に失業者があふれるため仕方ないとは思いますが。

一方、テキサス鉄道委員会(米国で原油生産量が最も多いテキサス州のエネルギー分野の規制当局)が原油の生産制限の導入について検討を始めましたが、もともとアメリカは市場競争原理を重視する国ですので、反対論が根強いようです。

このような状況ですのでアメリカ国内では貯蔵限界が近いにもかかわらず原油生産削減がなかなか進まず、大幅なコンタンゴが長期化する可能性が高いだろうと筆者は見ています。下図は2020年4月24日におけるWTI原油先物、ブレント原油先物、ドバイ原油先物のフォワードカーブの比較です。WTIの期近付近の落ち込みが相対的に大きいことが分かると思います。このような大コンタンゴ時は原油ETFの長期買い持ちは想像以上に不利なので注意しましょう。

forward_curve_Brent_WTI_Dubai

コロナにより石油需要が急減し在庫が積みあがり価格下落を招いている
原油ETFの影響でWTI原油はコンタンゴになりやすい?!
原油CFDの鞘滑り取りでコンタンゴを収益化する

WTI原油先物の終値が驚きのマイナス37.63ドルに

2020/4/20にCMEで取引されている原油先物価格(2020年5月限)がマイナス価格になりました。4/8時点においてCMEはマイナス価格をテストしていると表明しておりましたが、まさか原油先物価格が本当にマイナスになるとは驚きです。

下図は4/20の取引終了後(米国時間)のCMEのWTI原油先物価格一覧の画面です。
原油マイナス価格

一番上のMAY20(2020年5月限先物)のところを見ると、OPEN(始値)が17.73、LOW(安値)が-40.32、LAST(最終価格)が-17.39、Change(前日比)が-55.90、Settle(清算価格)が-37.63となっています。これまでの清算価格の最安値は1986/3/31の10.42ドルだったわけですが、その記録を一気に更新してしまいました。

4/17(金)における2020年5月限の取組高は108593枚ありました。4/1時点から約52万枚減っており、ほとんどの建玉は決済されたか、もしくは2020年6月限月にロールオーバーされたわけですが、残っていた約11万枚の買い建玉の一部が血祭りにされたものと考えられます(取組高11万枚の場合、売り建玉と買い建玉がそれぞれ11万枚残っている状態)。

現物受渡決済が可能な先物取引の場合、取引期限ギリギリになる前に投機筋やETFの建玉は次の限月にロールオーバーされます。取引期限ギリギリまで参加するのは、現物を扱える参加者と、無鉄砲な投機筋であると考えられます。

平時の原油マーケットであれば、5月の原油先物と、6月の原油先物の値鞘が10ドルを超える順鞘(コンタンゴ)になることは考えられません。なぜならば5月の原油先物契約を「現物受け取り決済」を行い、タンクに貯蔵し、翌月6月の原油先物契約で「現物渡し決済」すれば、「5月と6月の価格差からタンク保管コストその他経費を引いたもの」が利益として残るからです。

このように、現物の原油を用いた裁定(キャッシュ・アンド・キャリー取引)が働くであろうという根拠により、5月限を買い建てつつ、6月限を売り建てしていた投機的な市場参加者が一部残っていたのだろうと考えられます。そしてその参加者は自らは現物を引き取る気はなく「俺以外の誰かが、現物を使った裁定取引を実施するだろうから値鞘は縮まるだろう」という楽観的なシナリオで仕掛けていたものと考えられます。

下図は4/15に発表されたクッシング在庫ですが、異様な速度で激増しているのがわかります(なお、最新のデータは米国時間で4/22に発表されます)。
EIA_Weekly_Stocks_Cushing_Release200415

クッシング在庫とはWTI原油先物の受け渡し地であるオクラホマ州クッシングにおける原油在庫なのですが、内陸の不便な場所にあるため、過剰在庫になると容易には解消されないという問題があります。本来、主たる在庫基地はVLCC(Very Large Crude Oil Carrier、原油用の超大型タンカー)が着岸できる沿岸部に作るべきでしょうが、そもそもアメリカは長年に亘って原油輸出を禁止していた国ですから、WTI原油の受け渡し場所が、辺鄙な場所になったままであるという問題を抱えているわけです。

クッシングのタンクがもうすぐ一杯となって原油の置き場がない。でも油井を止めたほうが損害が大きい、だったら赤字でも先物のヘッジ用の売り建て玉を「現物渡し決済してしまえ」という原油生産者が多く存在したのだろうと考えられます。

平時では、先物市場で現物渡し決済される量は、先物市場の取引量全体に占める割合は僅かです。先物市場で売り建てていた生産者の多くは、平時では、ヘッジで行っていた売り建て玉をそのまま買い戻すことで差金決済します。ところがこの「買い戻し」が非常に少なかったため、暴落したのではないかと筆者は考えております。買い戻しが非常に少なかったため、ジワジワと価格が下がっていき最後は投げ売りになったのでしょう。現物受け渡しを伴う商品先物の最終決済日付近では、暴騰・暴落は、時々ある出来事です。さすがに今回の原油の事例は歴史に残る異常事態ではありますが。。。

ところで原油ETF(1699,1671,米国市場のUSO)の場合は、既に2020年6月限にロールオーバーが完了しているので、2020年5月限のマイナス価格は直接の関係はありません。GMOクリック等でCFDで投資している方も、既に2020年6月限にロールオーバーが完了しているので関係ありません(先週15日頃に巨大な価格調整額が発生して驚いてるかもしれませんが)。原油ETNの2038の場合は、TOCOMのドバイ原油の期先なので、WTIの値動きは直接は関係ありません。

コロナにより石油需要が急減し在庫が積みあがり価格下落を招いている
クッシング在庫って何?原油価格に影響するの?
原油がいきなり10ドルも下がったのはコロナ騒ぎではなくてサウジアラビアの大増産宣言
原油生産量上位三国(サウジアラビア、ロシア、アメリカ)の原油生産量の推移
原油CFDの鞘滑り取りでコンタンゴを収益化する
原油ETFを長期で買い持ちすると損をする。上がらない理由とは。

コロナにより石油需要が急減し在庫が積みあがり価格下落を招いている

米国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う外出禁止令により原油及び石油製品の需要が大幅に減少しています。下図は2020年4月15日に発表されたアメリカ原油在庫量です。見ての通り急激に在庫量が増加していることが分かります。

EIA原油在庫2020/4/15

下図はアメリカのガソリン在庫量です。車社会のアメリカでは春頃からガソリン消費量が増加して在庫が取り崩されていくのが例年の傾向ですが今年はコロナによる外出禁止の影響でガソリン消費量が激減し、在庫が急増しています。

EIAガソリン在庫2020/4/15

下図はガソリン需要期(先物の7月限)のクラックスプレッドの推移です。ガソリンクラックスプレッドとは、ガソリン価格と原油価格の差のことです。原油を加工してガソリンを作ることから原油価格よりもガソリン価格のほうが価格が高くなるのが通常の状態なのですが、今年の場合は需要が激減した影響でガソリン価格が原油価格よりも更に大幅に下落したため、ガソリンのクラックスプレッドが一時的にマイナスになってしまいました。ガソリンクラックがマイナスになるのはリーマンショック以来であり、しかもその変動速度はリーマンショック時の5倍くらいの速さでした。

NYMEX RB Crack Spread

クラックスプレッドがマイナスのまま生産を続けると製油所(石油の精製業者)は赤字が増える一方なので、当然のことながら稼働率を下げて対応しています。なお、2017年9月に稼働率が急低下しているのはハリケーンによる影響です。
アメリカ製油所稼働率

コロナの収束は、短期間のうちに「ハイ、もう大丈夫」という形にはならないだろうと筆者は見ています。つまり外出禁止命令が発令されなくなった後であっても、外出自粛しなければならない状況が長期化する可能性が高いと見ています。このため原油価格、ガソリン価格は、なかなか上がらないかもしれません。一方、効果的なワクチンが開発されれば状況は一変するわけで、、、どうなるかは分かりません。

2020年の原油価格の見通しと投資戦略へのヒント
原油ETFを長期で買い持ちすると損をする。上がらない理由とは。
原油がいきなり10ドルも下がったのはコロナ騒ぎではなくてサウジアラビアの大増産宣言
原油CFDを長期で買い持ちすると損をする。
原油CFDを扱うCFD会社の比較。銘柄、手数料、スプレッドなどなど。
原油生産量上位三国(サウジアラビア、ロシア、アメリカ)の原油生産量の推移

2020年の原油価格の見通しと投資戦略へのヒント

2020年の原油価格は波乱に次ぐ波乱の展開となっています。コロナウイルスによる世界の原油需要の低下予測に加え、サウジアラビアの価格破壊宣言により、完全に原油マーケットは壊れてしまいました。

昨年まではOPECの減産により原油価格は現在よりも高値安定していたわけですが、OPECシェアをアメリカが奪う形になっていたことを考慮すると、そう簡単にOPEC、ロシア、アメリカは妥協点を見い出せないのではないでしょうか。特にアメリカの場合は、原油生産者は民間企業ですからOPECやロシアのように国の意向で生産量を調整できないわけですから、価格低迷による市場からの淘汰という形でシェール関連業者が倒れるまで、この戦いが長期化する可能性が否定できません。

下図は過去の原油価格暴落後に、原油価格が持ち直すまでの様子を比較したものです。
原油価格の下落期間の比較
リーマンショック時は約150ドルの高値から120日かけて40ドルまで到達し、そこから60ドルまで戻るまで100日程度要しています(これは営業日ベースですから20日=一ヶ月で換算して下さい)。今回のコロナショック&サウジアラビア大増産ショックによる価格下落速度はリーマンショック時を上回る速度です。リーマンショックと比較すると、当面の間は、原油価格が底練りを続ける可能性が高いと筆者は見ています。

下図は2008~2009年頃(パリバショックからリーマンショック時)のWTI原油先物のフォワードカーブ形状を示したものです。
WTIのフォワードカーブ(リーマンショック時)
フォワードカーブとは期限が短い先物の価格を基準にして、期限が長い先物価格の価格を期間ごとにつないでいったもので、需給関係を予想するためには有用です。期限が短い先物価格ほど極端に安い場合は、「原油が投げ売り状態」であることを示しており、一旦、このような状態になると抜け出すまでには長い時間がかかることが多いです。

下図は2020年1~3月頃(コロナショック&サウジアラビア大増産ショック)における、WTI原油先物のフォワードカーブ形状を示したものです。リーマンショック時と比べると、まだマシですが、12ヵ月先の先物価格から見ると、最も期限が短い先物価格は10ドルも安い状態、すなわち、投げ売り状態となっています。

WTIフォワードカーブ(コロナショック)

このような大コンタンゴ状態のフォワードカーブが、短期間にバックワーディションになる可能性は低いため、原油ETFの長期保有、CFDでの長期保有は、かなり不利になる可能性が高いと考えられます。もし買いを検討しているのであれば、ETFとCFDの不利な点を理解した上で短期勝負前提としたほうが良いと思います。短期勝負であればCFDのほうが有利です。理由は単純でETFは東証が開いてる時間(9:00-15:00)しか売買できないのに対しCFDは海外市場が開いてる時間は売買できるので夕方~早朝での取引チャンスを逃さないからです。

原油がいきなり10ドルも下がったのはコロナ騒ぎではなくてサウジアラビアの大増産宣言
原油ETFを長期で買い持ちすると損をする。
原油CFDを長期で買い持ちすると損をする。
原油CFDの鞘滑り取りでコンタンゴを収益化する
原油CFDを扱うCFD会社の比較。銘柄、手数料、スプレッドなどなど。

原油がいきなり10ドルも下がったのはコロナ騒ぎではなくてサウジアラビアの大増産宣言

2020年3月9日に原油がいきなり10ドルほど暴落しました。コロナウイルスの影響だと思っている方が多いようなのですけど、主要な原因はサウジアラビアの大増産宣言のためです。コロナの影響で需要が減るだろうという状況下での増産宣言がトドメという感じです。

最近の主なトピックを箇条書きすると以下の通りであります。

・サウジがロシアに「追加減産」を打診する(2月末頃)。しかし、決裂してしまった。
・3月末で期限が切れる「従来から実施していた協調減産」すら延長しないことを決定(3/6)。このため3/6に原油は5ドル下落。
・その上、ロシアが「4月からどの国も好きなだけ生産できる」と煽る(余計なことを。。。)
・それにブチ切れたサウジが超・大増産発表(3/8の日曜)。過去最大の日量1200万バレルまで増やすこともできると非公式に発表。
・3/9月曜には原油が10ドルギャップダウン(NY時間で日曜の夜に原油の取引が始まるのだけど、いきなり暴落)
・3/10頃にロシアが「近い将来に日量50万バレルの増産もあり得る」と言い出す

こんな感じなのでサウジとロシアが再び手を結ぶ可能性は低いと考えられます。

で、サウジの言うところの過去最大の日量1200万バレルとは、どの程度か分かる図がこれです。まさに大増産と言える量。
top 3 crudeoil production countries

ちなみにOPEC及びロシアは、以前は手を組んで協調減産していたわけですが、結果として、下図のようにOPEC(主にサウジ)のシェアをアメリカが全部奪った形になっています。

opec vs us crude production

下図は3/6時点(サウジがブチ切れる前)のWTI原油先物のフォワードカーブです。
WTI forward curve

フォワードカーブとは期限が短い先物を基準に、期限が先の先物の価格が高いか安いかをつないだもの。期限が先のものほど価格が高いので「将来値上がりする」と誤解する人が多いですが、違います。投げ売り状態なので期限が短いものが安い、と考えるべきです。このような状態をコンタンゴ(順鞘、じゅんざや)といいますが、コンタンゴのときはETFの買い持ちや、CFDの買い持ちはロールオーバー時に大変損ですので、原油が安いからと言って安易に買うのは危ないです。短期リバウンド狙いは良いですが長期買い持ちは想像以上に不利です。

OPECが減産してもアメリカが増産するから需給がなかなか均衡しない
原油CFDを扱うCFD会社の比較。銘柄、手数料、スプレッドなどなど。
原油CFDの鞘滑り取りでコンタンゴを収益化する
原油CFDを長期で買い持ちすると損をする。
WTI原油先物のフォワードカーブと順鞘による負のロールイールドによる原油ETFの減価

人気のあるコモディティー関連のレバレッジETFとETN

日本の証券市場で最も人気があるETFはNEXT FUNDS 日経平均レバレッジ上場投信(1570)で、東証の売買代金一位の常連です。やはりボラティリティ(変動率)の大きい銘柄は何時の世でも人気がありますね。筆者は楽天証券とか松井証券の一日信用(手数料無料)を使って1570のデイトレをやってます。

ところで本場のアメリカ市場では、売買高が豊富で流動性の高いレバレッジ型ETF,ETNが日本市場よりも多くあります。本稿ではコモディティのレバレッジ型ETFとETNについてまとめてみました。

アメリカ市場には原油、天然ガス、金、銀などのレバレッジ型ETF/ETNがあります。しかしながら日本の取引会社で売買可能なものは一部だけとなっているようです。海外証券会社の口座開設のハードルは高いので日本国内で正規に営業許可されているCFD会社で売買するのが一番お手軽と言えると思います。

通称 シンボル 名称 何に連動? レバレッジ 長期保有 取引可能CFD業者(日本国内)
原油ブル2倍ETF UCO ProShares Ultra Bloomberg Crude Oil 原油 2倍 不利 GMOクリック証券CFD
原油ベア2倍ETF SCO ProShares Ultra Bloomberg Crude Oil 原油 マイナス2倍 不利 GMOクリック証券CFD
原油ブル3倍ETN UWT VelocityShares 3x Lng Crude Oil ETN New 原油 3倍 とても不利 なし
原油ベア3倍ETN DWT VelocityShares 3x Invrs Crude Oil ETN New 原油 マイナス3倍 とても不利 なし
天然ガスブル3倍ETN UGAZ VelocityShares 3x Long Natural Gas ETN 天然ガス 3倍 とても不利 GMOクリック証券CFD
天然ガスベア3倍ETN DGAZ VelocityShares 3x Long Natural Gas ETN 天然ガス マイナス3倍 とても不利 GMOクリック証券CFD
金ブル3倍ETN UGLD VelocityShares 3x Long Gold ETN 金 3倍 とても不利 なし
金ベア3倍ETN DGLD VelocityShares 3x Inverse Gold ETN 金 マイナス3倍 とても不利 なし
金ブル3倍ETF NUGT Direxion Daily Gold Miners Bull 3X ETF 金鉱山株 3倍 とても不利 GMOクリック証券CFD
金ベア3倍ETF DUST Direxion Daily Gold Miners Bear 3X ETF 金鉱山株 マイナス3倍 とても不利 GMOクリック証券CFD
銀ブル3倍ETN USLV VelocityShares 3x Long Silver ETN 銀 3倍 とても不利 なし
銀ベア3倍ETN DSLV VelocityShares 3x Inverse Silver ETN 銀 マイナス3倍 とても不利 なし

原油ブル2倍ETFは、1日の原油の動きの2倍の価格変動をするように設計されています。ポイントは「1日の」です。過去3日間連続で原油が+10%、+10%、+10%上昇する場合は、このETFは1.2×1.2×1.2=1.728倍となります。しかし上がったり下がったりすると、想像より上げ幅が小さくなります。例えば昨日原油が10%上がって今日10%下がったとすると1.2×0.8=0.96となり、4%も下がるハメになります。
ベア型は元になるコモディティーが下がったときに上がるようになってます。例えば天然ガスベア3倍ETNは、天然ガスの1日の変動率がマイナス10%のとき、3倍の+30%上昇するようになっています。レバレッジが大きいほど上げ下げが繰り返された場合に、思ったよりも損が拡大するので注意が必要です。

レバレッジ型のETFやETNは、短期売買ではレバレッジ特性で短期間で大儲けする可能性(大損する可能性)がありますが、年単位で長期保有した場合、ほぼ確実に損しますのでご注意下さい。また短期売買であっても、急激な価格変動によって、投資元本の全額以上を失う可能性はゼロではありませんのでリスク許容度の低い投資家は近寄らないのが無難でしょう。

注意点を一つ。GMOクリック証券CFDの金ブル3倍ETN、金ベア3倍ETNは、金価格の変動率の3倍ではありません。「金鉱山株」の1日の変動率の3倍なのでご注意下さい。金が動けば鉱山株も動くので、短期デイトレであれば特に支障はないと思いますが。

(以下、細かい話を補足)
コモディティは直訳すると「商品」ですが、投資の世界ではエネルギー(原油、天然ガスなど)、貴金属(金、銀、白金、銅など)、農産物(大豆、とうもろこし、小麦など)を意味します。これらは先物市場で活発に取引されているわけですが、先物市場にアクセスできない投資家が証券市場で容易に投資するために、ETFやETNが作られているというわけです。コモディティーは値動きが荒いときがけっこうあるのですけどレバレッジ型のETFやETNを活用することで短期利益を追求することができるというわけです。

ETFとはExchange-Traded Fundの略で、日本語では上場投信(取引所で自由に売買できる投資信託)となります。ETNはExchange-Traded Noteであり、指標連動証券などと訳されることが多いようです。平時においては小口で取引する個人投資家の立場では両者の違いを細かく云々する必要性はありません。しかしながらETNの場合は、金融機関が発行する債券という位置づけですので発行金融機関が破綻した場合には紙屑になるリスクがあります。リーマンショック時は金(ゴールド)のETFとETNが人気でしたが、当時は金融機関のデフォルトリスク(破綻リスク)が無視できなかったため、ETNのほうが僅かに割安で取引されていました。

天然ガスブル3倍ETNの特徴と取引上の注意点、攻略のヒント。
天然ガスベア3倍ETNの特徴と取引上の注意点、攻略のヒント。
VIXを売買する方法で一番簡単なのはCFD。
米国市場なら原油2倍ETFを空売りできる。
EIA原油在庫統計発表を利用してカナダドルのスキャルピング(短期トレード)
(広告)レバレッジ型ETF/ETNの取り扱いが豊富なGMOクリック証券CFD

カタールのOPEC脱退の影響は

2018年12月3日、カタールはOPECからの脱退を表明しました。下図に示すようにカタールの原油生産量はOPEC生産量の2%程度であることから、原油の需給そのものには大きな影響は与えないでしょうが、OPECの結束に綻びを感じさせるという点での影響力は無視できないかもしれません。

カタールの原油生産量とOPEC生産量に対する割合

下図は2017年における世界のLNG輸出シェアです(ソースはStatistical Review of World Energy 2018)。カタールはLNG輸出シェアは堂々の一位です。つまりカタールの国家の収入源という点では原油よりも天然ガスのほうが重要であるというのは明らかであり、確かにOPECに加入しているメリットは殆どないのでしょう。サウジアラビアと仲が悪くで国家断交している状態というのもOPEC脱退の理由の一つであると思われます。

[barChart width=”500px” stacked=”1″ legend=”{ position: ‘top’, maxLines: 2 }” vaxis=”{title: ‘年’, titleTextStyle: {color:’blue’}}” haxis=”{title: ‘億 立方メートル’, titleTextStyle: {color: ‘blue’}}” title=”LNG輸出量シェア2017(BP Stats2018より筆者作成)”]
[‘Year’, ‘カタール’, ‘オーストラリア’, ‘マレーシア’, ‘ナイジェリア’, ‘インドネシア’, ‘アメリカ’, ‘アルジェリア’, ‘ロシア’, ‘トリニダード トバゴ’, ‘パプアニューギニア’, ‘オマーン’, ‘ブルネイ’, ‘アラブ首長国連邦’, ‘ノルウェー’, ‘ペルー’, ‘アンゴラ’, ‘赤道ギニア’, ‘その他’],
[‘2017’,1034, 759, 361, 278, 217, 174, 166, 155, 134, 115, 114, 91, 77, 58, 56, 50, 48, 45],
[/barChart]

日本は様々な国からLNGを輸入しておりますが、カタールは主力輸入先の一つです。東北の震災直後に大きく輸入量が伸びていますが、近年は少し減少傾向にあるようです。

[lineChart vaxis=”{title: ‘数量(万トン)’}” haxis=”{title: ”}” title=”日本のLNG年間輸入量(国別)”]
[‘ 年’, ‘オーストラリア’, ‘マレーシア’, ‘カタール’],
[‘1990’, 291, 638, 0],
[‘1991’, 386, 702, 0],
[‘1992’, 459, 712, 0],
[‘1993’, 488, 748, 0],
[‘1994’, 599, 785, 0],
[‘1995’, 682, 803, 0],
[‘1996’, 717, 921, 0],
[‘1997’, 701, 943, 196],
[‘1998’, 723, 984, 282],
[‘1999’, 722, 996, 470],
[‘2000’, 727,1096, 583],
[‘2001’, 750,1131, 644],
[‘2002’, 719,1069, 625],
[‘2003’, 760,1240, 673],
[‘2004’, 816,1238, 682],
[‘2005’,1015,1360, 633],
[‘2006’,1216,1202, 748],
[‘2007’,1207,1327, 817],
[‘2008’,1198,1313, 820],
[‘2009’,1193,1262, 773],
[‘2010’,1328,1395, 763],
[‘2011’,1398,1496,1186],
[‘2012’,1591,1461,1566],
[‘2013’,1792,1494,1606],
[‘2014’,1841,1494,1614],
[‘2015’,1862,1557,1464],
[‘2016’,2242,1549,1212],
[‘2017’,2567,1481,1013],
[/lineChart]

BP,Statistical Review of World Energy(統計資料をPDFで無料で見れます)
(Reutersの記事)カタール、OPEC脱退でサウジに見事な意趣返し
(Bloombergの記事)カタールのOPEC脱退、サウジとロシアの関係強化の影響反映か
原油CFDを扱うCFD会社の比較。銘柄、手数料、スプレッドなどなど。
日本の液化天然ガス(LNG,Liquid Natural Gas)の年間輸入量推移と輸入単価
2018年11月の天然ガス暴騰の件
天然ガス在庫推移(グラフ)
(広告)CFDで天然ガスを取引できるGMOクリック証券CFD
(広告)CFDで天然ガスを取引できるサクソバンク証券株式会社

原油生産量上位三国(サウジアラビア、ロシア、アメリカ)の原油生産量の推移

2017年1月から開始されたOPEC加盟国と一部の非加盟国(ロシア等)の協調減産は、当初2018年3月末でしたが、2017年11月30日に行われた会合で2018年末まで延長することで合意されました。ちなみに減産量はOPEC加盟国合計で約120万バレル/日、ロシア等の非加盟国で約60万バレル/日であり、合計すると約180万バレル/日です。この数字は一見、大きいんですが後述するように、実はそれほどでもなくなってきました。

下図は世界の原油生産量上位三国(サウジアラビア、ロシア、アメリカ)の2016年1月以降の原油生産量の推移です。ソースはOPECのMonthly Oil Market ReportとEIAのMonthly Crude Oil and Natural Gas Productionです。マンスリーレポートはPDFファイルとなっており誰でも無料で閲覧できます。EIAのデータも無料ダウンロードできます。ロシアとサウジの数値はPDFから手作業で拾ったものであり、多少の入力ミスはご容赦下さい(毎月のPDFファイルを開いてExcelに手入力して作成)。

サウジアラビア、ロシア、アメリカの2016年1月以降の原油生産量の推移

ロシアは減産開始直前に大増産を行っています。2017年1月以降は確かに2016年12月よりも減産していますが、減産直前の量を基準として減産目標を決めているため実質的な減産量は僅かです。その上、2018年秋以降は過去最大量の生産量となっているようです。

サウジアラビアは2017年1月から、グラフではっきり分かるほど減産開始し、2018年5月までは辛抱強く減産維持していましたが、遂に2018年6月から増産しています。アメリカへのイラン経済制裁でのイラン原油輸出量が減ることに対するの穴埋めという見方もできなくはないですが増加量を見る限りは、我慢の限界が来たように見えますね。

一方、アメリカの生産量はOPEC協調減産開始の2017年1月以降、ほぼ一貫して右肩上がりの増産となっています。2016年12月の生産量が878万バレル/日であったものが、2018年9月には1148万バレル/日となっており、OPECとロシアの減産量の合計量を上回る増産をしていることが分かります。この結果サウジ、ロシア、アメリカの原油の合計生産量は2016年1月から2018年9月にかけて約1割(300万バレル/日以上)も増加する結果となっています。つまりOPEC減産量の2倍以上、ここ2年で増加してるというわけです。

下図は同じ時間軸(2016~2018年)のWTI原油先物価格チャートです。イランへの経済制裁報道(トランプ大統領によるイラン産原油を買うな、発言)で高騰する日もありましたが、サウジとロシアが増産を始めた頃から上値が重くなり、10月に入って遂に崩れたように見えます。

2016~2018年のWTI原油先物チャート

サウジアラビアの原油の生産コストは非常に安いと言われています。しかしながらIMFの試算によるとサウジアラビアが財政均衡する原油価格(ブレント)は85ドルから87ドル程度のようです。ちなみに本稿執筆時点(2018年12月26日)でのブレント価格は54.47ドル、WTI原油価格は46.22ドルでした。OPECが減産できるのは高々120万バレル/日であることから、原油価格維持のために減産に力を入れたとしても今後は焼け石に水の可能性があります。このように考えると、OPECが再び協調減産したとしても原油価格は高値に戻る可能性はあまり高くなさそうです。米国のシェールオイルの生産コストは60ドルという話もありますがもっと低い企業が多くあるのでしょうね。技術の進歩だけでなくトランプ大統領になってから規制緩和されたことによるコストダウンも寄与しているのかもしれません。

原油価格の下げ期間は、想像よりも遥かに長期化することがある
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米シェール企業は減産を検討しつつあると言ってるけど本気なんだろうか?
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日本の原油輸入量(国別、月次)

日本では原油が殆ど採れないため、ほぼ全量を輸入に頼っています。近年アメリカの原油生産量が増大していることや、アメリカのイランへの経済制裁により、日本の原油調達先に変化が出ているのではないかと考え、2016年1月以降の国別の原油輸入量のグラフを作成してみました。

日本の原油輸入量(国別、月次)

今さら語るまでもないのでしょうけど、サウジアラビアとアラブ首長国連邦からの輸入量が大半を占めています。アメリカからの輸入量はまだまだ低調です。現状ではメキシコ湾岸でVLCC(巨大な原油タンカー)に積み込んだ原油をパナマ運河経由で日本方面に運ぶのは高コストなのでしょう。と思ったのですが2018年6~10月の輸入単価を比較してみるとアメリカが54.46円/L、サウジアラビアが54.33円/L、アラブ首長国連邦が54.55円/Lとなっており、必ずしも価格競争力が無いわけではなさそうです。原油輸出インフラが整えば(特にアメリカ西海岸に輸出拠点ができれば)、アジア向け輸出量が増大する可能性は十分ありえそうです。

2018年5月8日にトランプ大領領が対イラン経済制裁を発表しました。原油関連は11/5以降から制裁されることになり、イランから原油を輸入している日本も困ったはずですが10月までの輸入量を見る限りは極端な影響は出ていないようです。イランは制裁前に安値売りをしたという話もあります。日本を含めた8カ国へのイラン産原油輸出は米政府が180日間の期限付きで容認したのであと半年は大丈夫と見るべきか、それとも?というところです。

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