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天然ガス先物とCFD

夏なのに、なんでガス価格がこんなに高いのだ?

半年くらい前のEIAのアウトルックでは、2021年の天然ガス価格は3ドル以上だ、みたいな話になってました。筆者も、まあそんなもんだろと思ってましたが、2021年2月の大寒波の大暴騰の後、下落していたのは僅かな期間であり、その後は天然ガス価格はほとんど棒上げでした。

下図は2022年1月限のNYMEXの天然ガス先物価格、JKM先物価格(アジアのLNG価格の先物価格)、TTF先物価格(ヨーロッパの価格指標であるオランダの価格のドル建変換価格)でありますが、夏だというのに馬鹿みたく上昇しております。NYMEXの天然ガス価格(HH,Henry Harbor),日本韓国向けLNG価格(JKM)、オランダのガス価格(TTF)の比較

これは2021年4月の気候変動サミットでバイデン大統領が「米国の温室効果ガス排出量を2030年までに半減させる」という公約と、2021年5月の国際エネルギー機関(IEA)が提案した化石燃料事業への投資禁止提案の2つが大きく影響しているためであろうと筆者は考えております。

単位熱量あたりのCO2排出量という観点では、化石燃料系の燃料の中で、天然ガスは最も優秀です(同じ熱量を得るためであれば一番二酸化炭素が少なくて済む)。CO2削減はEUが中心となって推進しているわけなので、アメリカのみならず、EUでもCO2削減が急速に進んでおり、当面の目標達成のために化石燃料の天然ガス化が消極的選択肢となっていると考えられます。長期的には天然ガスもボツにしたいが当面はガス使用量を増やすであろう、と考えられます(だからTTF価格は上昇してるのでしょう)。またICE(Intercontinental Exchange)には、排出権の先物が上場されてます。下図は2021年12月限の排出権先物のチャートですが、馬鹿みたく上昇しています。CO2排出量の削減は非常に難しい課題なので、とりあえずカネ払って解決しようというニーズが高まっているからでしょう。

EUA future chart

ところで、アメリカの天然ガスの在庫水準は、例年と比較して確かに低水準ではありますが、今の高値を正当化するほど低水準には見えません。

天然ガス在庫

季節傾向を見ると、冬場の「不足」を先取りしていることがわかります。アメリカのガス消費量には季節的な傾向があります。冷房需要(すなわち電力需要)が高まる夏場と、暖房需要(アメリカでは一般家庭にガス管を引いて直接暖房用燃料に使います)が高まる冬場に消費量が増加します。圧倒的に多くなるのは冬場です(下図)。

U.S. Natural Gas Deliveries to Electric Power Consumers and Residential Consumption

アメリカ以外の国でも、ガス需要のピークは暖房需要が増加する冬場です。近年、アメリカの輸出量の季節傾向を見ると、冬場の輸出量が増加する傾向が見えてきました。また2021年はまだ冬が来ていないのに輸出量が高水準となっています(下図)。

U.S. Natural Gas Exports

上の2つの図をくっつけて(さらに電力、暖房以外の消費量も加えて)、消費量と輸出量の合計の月ごとのトレンドを見ると下図のようになります。

U.S. Natural Gas Total Consumption and Exports

これより明らかなように「消費量&輸出量の合計量は冬場に激増する」ということがわかります。今はまだ夏だけど、この調子で行くと12月頃にはガスが足りなくなる可能性が高いということをマーケットが先取りしているわけですね。

というわけで今年の筆者の戦略は11月頃まではひたすら押し目買いかなあ、と妄想中。投資判断は自己責任で。

アジアLNG価格価格が約20ドルまで大暴騰
天然ガス発電が急速に伸びて天然ガス相場に大きな影響を与えている
いくらなんでも天然ガスは安すぎではないか?

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