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WTI、ブレント、ドバイ原油先物の限月(げんげつ)

2017/04/11

原油の先物取引では、最終取引期限が異なる先物が複数売買されています。先物の期限の満了する月のことを限月(げんげつ)と呼んでおり、期限ごとに例えば2016年9月限(にせんじゅうろくねんくがつきり)、2016年10月限(にせんじゅうろくねんじゅうがつきり)のように呼ばれています。限月の異なる先物は、別の銘柄として取り扱われます。例えば原油先物の9月限を買っていた人が10月限の先物を売ったとしても決済したことにはなりません。「9月限買い&10月限売り」になるだけです。9月限と10月限の原油先物は殆ど同じような値動きをしますが、限月が異なれば別の銘柄だからです。

原油先物で最も有名なものは米国CMEグループのNYMEX(New York Mercantile Exchange,通称「ナイメックス」)のWTI原油先物です。さらにICE(Intercontinental Exchange,通称「アイス」)のブレント原油先物も取引量が多く世界の原油取引の価格指標となっています。日本のTOCOM(Tokyo Commodity Exchange,東京商品取引所,通称「トコム」)のドバイ原油先物は、個人で取引するには問題ない流動性があり売買サイズもお手ごろで円建てで分かりやすいので筆者はちょくちょく取引していますが、王者であるNYMEXやICEと比べてしまうと市場規模は小さいのは否定できません。これら3市場の2016年7月29日の先物価格表を以下に示します。始値(はじめね)、高値(たかね)、安値(やすね)、終値(おわりね)と出来高(できだか)を示しています。始値とはその日の最初についた値段、高値はその日に最も高く取引された価格、安値はその日に最も安く取引された価格です。終値はその日の公式な最終価格であり必ずしも最後に取引された価格ではありません。取引所によって決め方に違いがあり、NYMEXの場合では米国東部時間(ET)の14:28~14:30の出来高加重平均であり、TOCOMの場合は日本時間15:10から15:15の出来高加重平均となっています。出来高はどれだけの売買単位の売買が行われたかを示しています。先物の売買単位の数え方は「枚(まい)」です。NYMEXとICEの原油先物1枚あたりの数量は1000バレル、TOCOMの原油先物1枚あたりの数量は50キロリットルです。1バレルは0.159キロリットルですので、NYMEXやICEの原油先物1枚分はTOCOM原油先物の3枚分よりやや多い数量ということになります。
※出来高加重平均(VWAP, Volume Weighted Average Price)は、売買された価格と数量を全部合計してから数量で割って平均値を計算したもの。例えば50ドルで3枚、51ドルで1枚、52ドルで2枚取引された場合、(50x3+51x1+52x2)÷6=50.8333ドルがVWAPです。NYMEXの場合はこういう計算をする時刻が、米国東部時間(ET)の14:28~14:30である、ということになります。ちなみにVWAPの仕組みを知っていたところで別段儲かるわけでもないので「終値はしっかりした仕組みで決めている」程度の認識で問題ありません。VWAPを決める時間帯は市場参加者が最も激しく売買するため超短期トレードをするならばこの時間帯は要チェックです(夜中ですけどねw)。

<NYMEX WTI原油先物価格の例 2016年7月29日>

限月 始値 高値 安値 終値 出来高
2016年9月 41.12 41.67 40.57 41.60 473289
2016年10月 41.83 42.39 41.30 42.33 112548
2016年11月 42.60 43.14 42.03 43.09 36515
2016年12月 43.31 43.89 42.72 43.84 55937
2017年1月 43.97 44.56 43.35 44.51 13929
2017年2月 44.45 45.10 43.98 45.06 7583
2017年3月 44.90 45.57 44.36 45.52 12862
以下略

<ICE ブレント原油先物価格の例 2016年7月29日>

限月 始値 高値 安値 終値 出来高
2016年9月 42.61 42.83 41.80 42.46 21544
2016年10月 43.14 43.60 42.52 43.53 286540
2016年11月 43.56 44.04 42.95 43.98 92952
2016年12月 44.08 44.64 43.52 44.57 113679
2017年1月 44.56 45.14 44.03 45.07 22987
2017年2月 45.02 45.62 44.50 45.54 14305
2017年3月 45.52 46.07 44.96 45.99 17317
以下略

<TOCOM ドバイ原油先物価格の例 2016年7月29日>

限月 始値 高値 安値 終値 出来高
2016年7月 27750 27820 27720 27810 39
2016年8月 26840 26910 26090 26110 981
2016年9月 26970 27140 26150 26240 858
2016年10月 27030 27160 26180 26220 615
2016年11月 27260 27340 26350 26400 947
2016年12月 27410 27570 26520 26590 14193

3つの取引所の原油価格表を見比べてみると、NYMEXは2016年9月限の出来高が最も多いことが分かります。取引所によって最終取引日が異なるため、売買数量の最も多い限月(売買の中心となる限月)は取引所によって異なります。海外の取引所では基本的には最も期限が短い限月の出来高が多くなります。しかし考えてみれば残り1日しかない限月をあえて選ぶ必要はありませんよね。このため最終売買日より少し前に売買数量が最も多い中心限月は次の限月に入れ替わって行きます。2016年7月29日の場合ですと、NYMEXの原油先物の中心限月は9月限ですが、ICEの場合は10月限になっています。

特殊なのがTOCOMです。日本の商品先物市場は例外的に「期限が最も長い限月」の売買数量が最も多いという変な特徴があり、2016年7月29日の場合ですと最も期限の長い2016年12月限の売買数量が最も多く、最も期限の短い2016年7月限の売買数量は殆どありません。ちなみに日本市場でも日経225先物の場合は海外の先物市場と同様に期限が短い先物ほど売買数量が多くなっております。

TOCOM原油の限月の数は常に6つです。期限が来て上場廃止になると新しい限月が追加されます。海外の原油先物市場の場合は最初から非常に多くの限月があります。NYMEXの場合、2016年7月現在、2024年12月限という超長期の先物が存在します。ICEの場合ですと2023年3月限まであるようです。

但し原油CFDでは、取引会社が原油の参照限月を決めており好きな限月を選べません。取引会社が決めている参照限月は基本的に「もっとも売買数量の多い中心限月」ですが、それは時間の経過で変化してゆくため、取引会社が強制的にロールオーバー作業を行い、そのときの差額を価格調整額として受け渡ししてきます。ロールオーバーに伴う差額は過不足なく授受されるので損をするわけではないのですが、「あれ? 俺っていくらで原油買ったんだっけ?」という状態になりがちであるという問題が発生します。

日経225先物のような株価指数先物の場合、限月交代しても異なる限月の価格差は僅かなので、限月交代(ロールオーバー)しながら先物を長期で買い持ち(あるいは売り持ち)していても、先物価格と損益の関係に違和感を感じることは殆どありません。しかしながら原油先物の場合は、期限の異なる限月の価格差が想像以上に大きいため、原油ETFの長期買い持ちを行う場合や、原油CFDの長期買い持ちを行う場合、「世の中の原油チャート」と見比べると思ったより儲からないと感じるケースがあります。この辺の議論に関しては他記事に展開してありますので、ご興味があればご覧下さい。

追記:現在はTOCOMの終値の決め方が変更なっています。2016年9月に新システムに移行したときに終値の決め方が15:10-15:15のVWAPから、15:15の引け板合わせに変更になっています。

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