TOCOM(東京商品取引所)のドバイ原油のサヤ取り
2019/06/26
下表は2016年1月6日のTOCOM(東京商品取引所、通称「トコム」)のドバイ原油先物の価格表です。
<TOCOM ドバイ原油先物価格 2016年1月6日>
限月 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 出来高 |
---|---|---|---|---|---|
2016年1月 | 24250 | 24250 | 23390 | 23330 | 288 |
2016年2月 | 24900 | 24940 | 23930 | 23970 | 357 |
2016年3月 | 25760 | 25760 | 24740 | 24770 | 488 |
2016年4月 | 26420 | 26420 | 25490 | 25500 | 1523 |
2016年5月 | 27150 | 27150 | 26210 | 26220 | 12435 |
2016年6月 | 27820 | 27840 | 26910 | 26930 | 11689 |
TOCOMの原油先物の限月は6つあり、2016年1月6日現在、一番期限が短いものは2016年1月限(にせんじゅうろくねんいちがつきり)、2番目に長いものは2016年2月限、最も期限の長いものは2016年6月限でした。2016年1月限が取引期限を迎えると新たに2016年7月限が追加される仕組みになっています。
どれもドバイ原油先物ですが、売買する上ではまったく別の銘柄として取り扱われます。例えば2016年4月限の原油先物を1枚買っていた人が、2016年6月限の原油先物を1枚売ったとしても、決済したことになりません。以下のような建玉に状態になるだけです。
「2016年4月限 1枚買い建て」
「2016年6月限 1枚売り建て」
一見、単なる両建てに見えますが、限月が異なる両建てなので損益は僅かながら変動します。異なる限月の先物は、ほとんど同じ動きをするのですが僅かながら値動きに違いがあるためです。上手にやると利益を出すことができ、これを専門にやっている人も存在します。このように同じ種類の先物で、限月だけが異なるものの一つを買い、もう一つを売る売買を「異限月鞘取り(いげんげつさやとり)」と呼びます。しかし筆者がトレード仲間と会話するときは単に「原油先物のサヤ取り」などと言っています。
下図は2016年1月~2月のTOCOMのドバイ原油先物チャートです。6つある限月をすべて重ね描きしているのでごちゃごちゃして分かりづらいですが、2016年1月限が満期を迎えて消滅し(上場廃止となり)、2月初日から2016年7月限が登場している様子が分かると思います。なお、2016年1月限だけ「値動きが悪い」ように見えますが最終月の最終決済価格はドバイ原油の「月間平均値」になるように決められているためです。個人投資家はわざわざ期限が短い先物を売買せずに期限が長い先物を売買すれば良いので気にする必要はありません。
上のチャートから2016年6月限と2016年4月限だけを選び、更に2016年6月限の価格から2016年4月限の価格を引いたもの(ドバイ原油のサヤ)を重ね描きした結果を下図に示します。オレンジ色の棒グラフが原油先物のサヤで左側の軸に対応し、線グラフは原油先物価格で右側の軸に対応します。
ドバイ原油先物の6月限と4月限の値動きは、ほとんど同じような動きをしますが、両者の差(ドバイ原油6月限の価格から、4月限の価格を引いた「サヤ」)は、「攻略しやすい動き」をします。1/6頃から1/20頃まで、原油先物は大きく下落していますが途中でリバウンドしている日もありますが、この期間においてサヤは単調に縮小しています。動き始めた方向に単調に動くのを狙うのは心理的負担が小さいことから、積極的にこの動きを狙うという方法が考えられます。心理的負担の大きさは資金投入量が大きくなるとボディーブローのように効いてきます。
あと講釈になってしまいますが、この時期に原油のサヤ取りを仕掛けるとしたら、1/6頃に「ドバイ原油 4月限1枚買い建て&6月限1枚売り建て」を仕込み、1/20頃に「ドバイ原油 4月限1枚売り決済&6月限1枚買い決済」をすれば良かったな、ということがわかります。
仕込日 | 限月 | 売買 | 価格 | 決済日 | 売買 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|---|
1/6 | 4月限 | 買建 | 25500 | 1/20 | 売(決済) | 18650 |
1/6 | 6月限 | 売建 | 26930 | 1/20 | 買(決済) | 19710 |
4月限は25500円で買い建てたものを18650円で売り決済したので6850円の損失ですが、6月限は26930円で売り建てたものを19710円で買い決済したので7220円の利益です。合計すると370円の利益となります(実際はこれの50倍です。後述)。
慣れてくると「サヤ」だけを見たほうが分かりやすくなります。1/6のサヤは26930-25500=1430円でした。1/20のサヤは19710-18650=1060円でした。1430円のサヤが縮むほうに賭け、1060円に縮んだので、利益は1430-1060=370円ということになります。当然ながらさきほどの計算結果と一致します。ちょっと考えてみると分かりますが、損益は先物価格が上がろうが下がろうがまったく関係なくて「サヤが広がるか、縮むか」ということだけで決まります。先物価格が上がるか下がるかに賭ける売買ではなく、サヤが広がるか縮むかに賭ける売買ということです。
この原油価格は1キロリットルあたりの価格なのですが、原油先物1枚は50キロリットルに相当します。つまり実際の損益は、これの50倍となります。370円×50=18500円です。この売買に要する資金は、取引会社によって異なりますが、ざっくり言って20~30万円程度必要です。利益率は低いのですが、慣れてくると勝率がかなり高くなるので安定運用するという点ではなかなか優れた売買だと筆者は考えています。もちろん負けることもあり、小さな値幅しか取れず手数料を払うと利益が全然残らないようなこともあります。理屈っぽい人向けかもしれません。
筆者の場合「毎年のサヤの季節変動の傾向」「過去のサヤの変動範囲」「サヤ変動のリズム」「海外市場との比較」などを総合的に考えて広がるか縮むかを予想して仕掛けてます。
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