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東京商品取引所(TOCOM)でのガソリンとドバイ原油のサヤ取り

2019/06/26

東京商品取引所(TOCOM)ではドバイ原油先物のほか、ガソリン先物や灯油先物も上場されております。ガソリン先物は「東京バージガソリン」という名称になっています。バージというのは「内航船」のことで当業者(石油元売会社や、商社など)が現物受け渡し決済を行うときに船に石油を積載した状態で受け渡しするルールになっているため、「東京バージガソリン」という名称になっています。一般投資家の立場では単に「ガソリン先物」と思えば良いです。取引量がかなり少ない灯油先物は、初心者はやめたほうが良いでしょう。

ガソリン価格と原油価格にはどんな関係があると思いますか。ガソリンは原油から精製されるので、リンゴジュースとリンゴの関係に似ています。製造原価という面から、超大雑把に言って以下の関係式が成り立ちます。

リンゴジュースの原価=原料のリンゴの価格+加工費
ガソリンの原価=原料の原油の価格+精製費

ガソリンの精製費は絶対にマイナスではないはずだし、ほぼ一定のはずです。とすると「ガソリン価格と原油価格の差」は、概ね、一定範囲になるであろうと予想されます。こうした背景から「ガソリン先物買い&原油先物売り」というようなサヤトリが機能するわけです。ガソリン等の石油製品と原油との価格差を「クラックスプレッド(Crack Spread)」と言います。

実際のところ、夏場はガソリンの需要が増える(冬場は減る)だとか、春や秋に製油所の定期補修があって稼働率が下がるだとか、輸入ガソリンもあるだとか、様々な要因でガソリンと原油の価格差は変動しますが、毎年似たような時期に同じような要素が作用する年が多いため、例えば「毎年11月初旬にはガソリン先物を買って原油先物を売ると利益になりやすい」というような攻略が可能となります。下図はガソリン先物5月と原油先物4月のクラックスプレッドです。執筆時は2016年11月ですが、先物ですから、ガソリン先物の2017年5月限と原油先物2017年4月限のクラックスプレッドですのでご注意下さい。冬場はクラックスプレッドの拡大狙い(ガソリン買い原油売り)で儲かりそうに見えますね。

TOCOM ガソリン5月限とドバイ原油4月限のサヤ(クラックスプレッド)

ガソリンのクラックスプレッドのような異なる先物銘柄を使ったサヤトリの注文は、ガソリン先物と原油先物の各々に別々に注文を出して片方を買って他方を売れば良いわけです。下図は2016年11月11日のガソリン先物と原油先物の同時刻の価格表です。今、この瞬間ではガソリンを43210円で買うことができ、原油を29750円で売ることができることが分かりますよね。この価格差は13460円となります。

ガソリンと原油の各々の価格表示(例)

ここで見逃せない情報があります。一部の商品先物会社では商品間SCOという超便利な注文を用意しておりまして、クラックスプレッドの値鞘で直接指値することが可能です。しかもこの注文は取引所が用意している注文方法であるため片方しか約定しない、ということがありません(売りと買いの両方が成立するか、または両方とも成立しないか、のどっちか)。商品間SCOを使える取引会社は少数派ですが、Evolution Japan株式会社や日産証券の取引ツールでは、この注文方法を使うことができます(商品間SCOは取引所が用意している注文方法にもかかわらず商品先物取引会社ではこの注文方法を使えないところが多数あります)。下図はガソリンと原油の商品間SCOの価格表です。こちらは13440円の売り注文がありますので、ガソリン買い原油売りを13440円で成立させることができることがわかります。

ガソリンのクラックスプレッド(商品間SCO)の価格表示(例)

ここではEvolution Japanで注文する例を書いてみます。まず取引ツールにログインします。左欄の注文に「新規」「新規複数」などいろいろありますが、上から7番目に「コンビネーション」があるのでそれをクリックします。するとコンビネーション注文を入力する欄が現れますので、「SCO(商品間)」を選択します。

ガソリンのクラックスプレッドの注文(例)

今回、新しい注文ですので一番左の欄はA,Bともに「新規」を選びます(もし決済するときはいちいち「仕切」を指定しなければなりません)。A,Bの意味は銘柄が2つ(ガソリンと原油)なので便宜的に記載されているだけで特に意味はありません。また注文条件は「指値 FAS」を選びます。SCO(商品間)の気配値は買い気配と売り気配がけっこう開いていることがあるので指値注文が基本だと考えて下さい。

FAS FAK FOK
一部約定後に未執行数量が残るとき、その残数量を有効とする 一部約定後に未執行数量が残るとき、その残数量を失効させる 全数量が直ちに約定しない場合は、その全数量を失効させる

いわゆる普通の指値注文は「指値 FAS」である、と考えて差し支えありません。寄り板合わせに注文を出すときなどにFAKを使う場合がありますが、使わなくてもあまり困りません。私は滅多に使いません。

次に商品を選択しますが、ガソリンと原油を選ぶ場合は上側(Aのほう)をガソリン、下側(Bのほう)を原油とします。限月は最も取引量の多い限月(もっとも取引期限が長い限月)を選ぶのが無難です。取引量の少ない限月は売り気配と買い気配の差が大きいためなかなか約定しないためです。原油の限月は自動的に選択されますが、ガソリンの2017年5月限に対応する原油は月が一つ前の2017年4月限となります(分かり辛いですが、そういうものなので仕方ありません)。

ガソリンのクラックスプレッド(ガソリン価格から原油価格を引いたもの)が、拡大すると思うのであれば、上側(Aのほう)を「買」、下側(Bのほう)を「売」とします。枚数は「ガソリンを1枚買い&原油を1枚売り」の注文をするなら「1枚」です(買いと売りで合計2枚だけど「1枚ずつ」だから「1枚」というわけです)。

有効期限は1日限りです。注文の例では16/11/09となっていますが、これは画面をキャプチャーした日が2016年11月9日だからです。ちなみに2016年11月8日の夕方四時半から始まる夕場は「2016年11月9日」扱いです。「2016年11月9日」扱いとなるのは、11/8の16時30分~11/9の15時15分までです(15時15分が取引終了時刻)。

夕場が始まるのは16時30分で、翌日の5時30分に終了します。その後8時45分に開始して15時15分に終了です(但しSCO注文は15時10分迄)。1セッションのみにチェックしない場合は夕場に出した注文を翌日の昼間(8時45分~15時15分)にも引き継がれるが、チェックしないと午前5時30分で失効します。サラリーマン等で昼間に取引する余裕がない人でも昼間に有効な指値を出し続けられるということですね。

必要証拠金は11/9の時点では「ガソリン1枚買い&原油1枚売り」の注文で28万円でした(ときどき変更されますのでギリギリしか資金を入れないと追証がかかるおそれがあるので注意)。これが高いか安いか?ですが、投機として考えれば資金効率が悪いと思うかもしれませんが、保守的な投資であると考えれば妥当な線だと思います。例えば「2週間かけて500円幅を狙う取引(倍率50倍ですので、手数料抜きの利益は25000円)」だとすると、28万円を2週間運用して2.5万の利益を狙うわけですので、十分な利益率であると言えます。チャンスは年に何度もあるので繰り返しやることで年間通して見ると馬鹿にならない金額を獲得でき(る人もい)ます。「50万円入金しておいて、1回あたり2万円目標で、月1回仕掛け、1年で資金を2割増やす」くらいのペースの投資という感じで考えるのが良いと思います。先物取引ですので目一杯仕掛けるとリスクは相当高くなります。資金一杯仕掛けるのはやめましょう。

クラックスプレッドの勝率を上げたい人は過去の季節傾向の分析をするだけでなく、毎週の石油連盟発表の週間在庫統計を見ると良いと思います。冬場の灯油のクラックスプレッドをやる人は、在庫統計のほか北海道及び東北地方の気温推移も監視すると良いと思います。

※EVOLUTION JAPAN株式会社は商品先物の取次業務をやめてしまいましたが、日産証券 商品先物取引でSCO注文は取り扱いがあります。

TOCOM(東京商品取引所)のドバイ原油のサヤ取り
ドバイ原油先物でコンタンゴ拡大を狙うサヤトリ

<注意>
2017年5月8日から新たに石油スワップ取引が上場されました。これにより従来のガソリン先物は「バージガソリン」、新しく上場されたガソリンスワップは「バージガソリンスワップ」という名称で呼ばれるようになりました。注文を出すときは間違えないように注意して下さい。まったく出来高がないほうに注文を出してしまうと危険です。

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