1699と1671って何が違う?比較してみる。
2020/04/27
ETFは上場投資信託と呼ばれており一般の株式(例えばソニーやトヨタ自動車など)と同じように取引所で自由に売買ができます。ETNは指標連動証券と呼ばれておりETFと同様に取引所で自由に売買ができます。最低取引単位が定められておりますが、小資金から投資できるものが大半です。例えば1699「NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信」は2016年5月13日時点で360円であり、売買単位が10株ですから僅か3600円で原油投資が可能です(別途売買手数料は必要です)。1671「WTI原油価格連動型上場投信」は2016年5月13日時点で2348円であり、売買単位が1株ですから僅か2348円で原油投資が可能です(別途売買手数料は必要です)。東京市場で活発に売買されている原油のETFはこの2つですが、2038「NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETN」というETNも活発に売買されてます。2038は少々特殊ですから別ページで研究してみます。
ところで、1699と1671って何が違うんでしょうか?
対象指標は、1699が「NOMURA原油ロングインデックス」で、1671が「NYMEXにおけるWTI原油先物の直近限月の清算値を円換算で表示したもの」となっていますが、両者に大きな違いはあるんでしょうか?
NOMURA原油インデックスは、「取引量が多く流動性が十分あるものを構成銘柄として採用」していますが、これは具体的にはNYMEXにおけるWTI原油先物のことを指しています。原油先物は毎月期限を迎えるために限月交代(ロールオーバー)してゆきます。NOMURA原油インデックスはけっこう細かいところまで運用ルールを開示しておりまして、超簡単に要約すると、概ね第5営業日にロールオーバーする、と書かれていました。
JPXのETFのページにあるPDF資料では、1699の対象指標は「NOMURA原油ロングインデックス」としか書いてありませんが、野村アセットマネージメントの発行した投資信託説明書によれば、「NOMURA原油ロングインデックスを対象指数とし、日本円換算した対象指数に連動」と記載されています。
1671のロールオーバーに関しては、筆者が必死に探した限りにおいては、「NYMEXにおけるWTI原油先物の直近限月の清算値を円換算」よりも詳しい情報は得られませんでした。ロールオーバーする日が分からないのであれば「直近限月」が一意に決まりません。というのは、直近限月(第1限月)と第2限月の値鞘は日々変化するから、その分の影響が見積もれないからです。
とは言うものの、1699と1671との間に大きな違いがあるとは思えません。どちらもWTI原油価格と為替に応じて価格変動することは確かなのだから、両者のチャートを重ね描きしてみれば、だいたい同じなのか、けっこう違うのか一発で分かります。早速比較してみましょう。
はい、予想通り、だいたい一致しましたね。細かく見ると2015年前半は1699のほうが若干アウトパフォームしてるなあとか、2016年に入ると1671のほうが若干アウトパフォームしてるなあというのが分かりますが、大差はないようです。時期によって強弱に若干の差異があることからこれらの違いは、信託報酬の差異を反映しているわけではなさそうです。ということは、どっちがいいか?というのはこれだけでは判断できません。
じゃあ分配金の多寡で比較してみましょう。1699では投資信託説明書に「信託財産から生ずる利子・配当等収益から経費を控除後、全額分配することを原則とします。ただし、分配金がゼロとなる場合もあります。また、売買益が生じても、分配は行ないません。」と記載されています。WTI原油先物を買い建てる場合は、証拠金と呼ばれる一部の代金だけを積めば良いため全資金を原油先物に投入しているわけではなく、余った資金は米国債で運用しております。これによる利息が十分にあれば、配当することもあるけどゼロになることもあるよ、ということを言っているのだと思われます。これまでの実績では分配金はずっとゼロ円です。1671の分配金に関しても概ね同様であり、これまでの実績はずっとゼロ円です。金利が上昇してくると分配金が発生する可能性があると思いますが、この低金利のご時勢では、無いと思っておいたほうが良いでしょうね。
次に純資産額を比べてみると2016年6月9日現在、1699は437億円、1671は507億円でした。どちらも十分な市場規模がありますね。特に寄付時は十分な板の厚さがあるので成行注文で1000万円分買ったとしても、さほど不利な値段にはならないと予想されます。マーケットメーカーが十分な数量で上下に指値していますからね。もしデイトレするなら1671のほうが良いかもしれません。というのは、1699は1円単位で動くけれど値位置が低いので、買い気配と売り気配の板が分厚すぎて値動きが重く小幅抜きトレードが困難だからです。下図は松井証券のツールで見た2016年5月30日の午後の某時間の板画面です。こんな感じで1699は最小値動きの価値が大きくて値動きが重いので、1671のほうがデイトレ向きだと思います。1699が1円動くとき1671は10円以上動くわけですからね。
証券コード | 1699 | 1671 |
名称 | NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信 | WTI原油価格連動型上場投信 |
上場市場 | 東証 | 東証 |
上場日 | 2010/5/17 | 2009/8/3 |
ベンチマーク | NOMURA原油ロングインデックスが対象指数で円換算 | WTI原油先物の直近限月の清算値の円換算値 |
純資産 | 437億円(2016/6/9) | 507億円(2016/6/9) |
運用会社 | 野村アセットマネジメント | シンプレクス・アセット・マネジメント |
信託報酬 | 年率0.54%(税込み) | 年率0.918%(税込み) |
決算月 | 2月 | 1月、7月 |
運用原油先物 | NYMEX及びICEのWTI原油先物 | WTI原油先物 |
余資の運用先 | 米国債 | 米国債 |
分配金 | 設定来の累計分配金は0円 | 設定来の累計分配金は0円 |
売買単位 | 10口 | 1口 |
最低投資金 | 3780円(2016/6/10) | 2472円(2016/6/10) |
補足。NYMEXとはNew York Mercantile Exchangeのことで、現在はCMEグループを構成する一部門となっているようです。WTIとはWest Texas Intermediateの略でアメリカ合衆国で産出される主要な原油の名称です。原油は産地によって成分や性質が異なるのですが、簡単に言うと、ガソリンなどの高付加価値な石油製品をたくさん作れる良質な原油、と考えてよいです。
補足2。1699はICE(Intercontinental Exchange)のWTI原油にも投資しておりますが、NYMEXのWTI原油と同じであると考えて差し支えありません(清算価格は同じになります)。
筆者は1671を時々デイトレします。ただしこれは原油との相関が高い株のヘッジ目的の場合であって長期買い持ち(あるいは売り持ち)はしません。というのは1699とか1671って東証が開いてる時間しか売買できないので、原油がよく動く時間帯に取引できなくてモヤモヤするためです。取引時間のことを考えると東京商品取引所の先物か、原油CFDのほうが適していると思います。先物はサイズが大きいのでCFDのほうが利便性は高いかもしれません。
<追記事項(2020年4月24日)>
WTI原油先物2020年5月限がマイナス価格になった影響で原油ETFが、緊急的に、早めにロールオーバーしています。本来の運用ルールでは6月限の先物のロールオーバーは5月に入ってから実施されるはずですが、ETFを守るために仕方なく実施したものと思われます。米国市場のUSOでも同様の施策(6月限を40%、7月限を55%、8月限を5%に変更)が行われています。
4/22時点における1699の原油先物の保有数量は以下の通りです。
WTI原油先物2020年 7月限 7000枚 (ICE)
WTI原油先物2020年 8月限 6500枚 (NYMEX)
WTI原油先物2020年12月限 6400枚 (NYMEX)
詳細はここのページのお知らせを参照下さい。(但し古いものは消えていくので古いものは見れなくなります)
4/22時点における1671の原油先物の保有数量は以下の通りです。
WTI原油先物2020年 7月限 24064枚
WTI原油先物2020年 8月限 6025枚
1671の保有数量は関しては4/23の適時開示に掲載されておりますが、これも時間が経過するとどんどん消えてしまいます。
上記の緊急的なロールオーバーにより、1699と1671の今後の価格変動率には、僅かな差異が発生する可能性があります。というのは限月によって騰落率が微妙に異なるからです。
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