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原油先物とCFD

トランプ政権は原油価格に弱材料?

2017/03/19

トランプ大統領はMake America Great Againというスローガンの下、米国第一主義の政策を実行し始めました。エネルギー省長官にリック・ペリー氏(前テキサス州知事)を、環境保護庁長官にスコット・プルイット氏(前オクラホマ州司法長官)を指名しました。トランプ大統領は選挙期間中にエネルギー政策の柱としてシェール掘削規制の緩和を掲げており、この政策を実行するために必要な人材を起用したと考えられます。テキサス州はエネルギー産業が盛んな州ですからそこで知事をしていたリック・ペリー氏はどう見てもシェール推進派でしょうし、地球温暖化について疑義を唱えているスコット・プルイット氏を環境保護庁長官に起用するということは、環境規制を緩めますと宣言したようなものです。オバマ政権下では環境汚染を防ぐために、大量の水や化学物資を使用するシェールの掘削基準が厳格化されたり、パイプライン延伸工事の許可を出さなかったりしましたが、新大統領によってこれらのことがひっくり返されつつあります。

2017年1月18日のロイターの記事によりますと、トランプ大統領が内務長官に指名したライアン・ジンキ下院議員は、米国政府の所有地における石油掘削・探鉱について規制を緩和して掘削地域の拡大を検討するとのこと。

2017年1月25日のロイターの記事によりますと、トランプ大統領はカナダから米国に原油を輸送する「キーストーンXL・パイプライン」と米ノースダコタ州に敷設予定の石油パイプライン「ダコタ・アクセス」の建設を推進する大統領令に署名したとのこと。素人的イメージとしては、太いパイプの中を原油が流れるだけで、なぜ環境問題になるのかとちょっと考えてしまいますが、そもそも工事を行うために大自然の中で穴を掘ったり埋めたりする作業が行われ、さらに実際のパイプラインは漏出事故がかなりの頻度で発生するため、パイプラインは環境負荷がけっこう大きい設備なのです。「キーストーンXL・パイプライン」が完成すると、パイプライン経由で米国に輸入されるカナダのオイルサンドからの重質原油の数量が増えることになります。

要するにトランプ政権下では、「シェールオイル増産」「カナダからの原油調達量増加」という方針、つまり中東、アフリカからの輸入量削減を目指しているということだと思います。これにより米国における石油関連産業での雇用は増えると考えられますが、米国の石油(原油やNGL等)生産量が増えることを意味しますので、これはどう見ても原油価格そのものについては弱気材料となりそうです。

原油にはたくさんの種類がありますが、世界の「原油先物」のうち取引量が圧倒的に多いものは、WTI原油先物とブレント原油先物の二つだけです。どちらも似たような性状の軽質原油(ガソリン等の高付加価値な石油製品がたくさん作れる原油)なので、両者の価格は、ほぼ同じになりそうな気がしますが、なかなかそういうわけにはいきません。WTI原油先物の場合、原油先物を売っている人は、受け渡し場所であるオクラホマ州クッシングに現物の原油を送油することで最終決済をすることができます。一方、クッシングは内陸部にあり、クッシングからメキシコ湾岸へのパイプラインの送油能力も有限ですから、クッシングの在庫が著しく多い場合にはブレント原油先物に対してWTI原油先物価格が滅茶苦茶に安くなった時期がありました(ブレントが100ドルなのにWTIが20ドルも安い80ドルだったりとか滅茶苦茶な価格だった)。シェールオイルの生産が本格化した2011~2012年頃は、米国からの原油輸出が禁止されていましたので(1975~2015年は輸出禁止。2016年に解禁)、クッシングでブレントより大幅に安く売られた原油をパイプライン経由でヒューストンやポートアーサーまで送油してタンカーに積んで輸出してしまうわけにはいかなかったためです。

トランプ氏が当選する前の2016年8~10月頃はWTIはブレントより1~2ドルのディスカウントでした(WTIのほうが安かった)。トランプ政権で米国のシェールオイル生産量が増えると、クッシングの在庫は現在よりもだぶつき気味になると予想されるため、WTIの対ブレントのディスカウント幅は拡大するだろうと筆者は予想していました。ところがトランプ政権では海外からの輸入原油にも輸入税を課す方針のようでWTIの対ブレントのディスカウント幅が激しく動いています。大きく動いているのは期限の長い先物価格です(輸入税を課す手続きが成立して影響が出るのは今すぐじゃないから)。

ブレントとWTIのスプレッドの推移(2016年8月~2017年1月)

WTI原油先物の推移(2016年8月~2017年1月)

2017年1月17日のReutersの関連記事発見しました。邦訳は探したけど、見当たらず。
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