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2016年秋のOPEC減産合意前後におけるWTI原油先物のフォワードカーブの変化

2017/03/19

OPECは2016年11月30日の総会で、原油生産量の削減で合意しました。2017年1月~6月迄のOPEC全体での生産量を日量3250万バレルに抑えるというものです。OPECの2016年10月、11月の生産量は日量3372万バレル、3387万バレルでしたので日量約130万バレルの減産ということになります。一方、12月10日にウィーンのOPEC本部で行われた閣僚会合において、一部の非OPEC諸国も1月から減産することに合意しました。非OPECで最も減産量が多いのはロシアで2016年11~12月の生産量を基準に2017年前半に日量30万バレルの減産予定とのこと。これらの報道を受け、原油価格は50ドル台を回復しました(下図)。
2016年8月~12月のWTI原油先物チャート

一方、WTI原油先物(ブレント原油先物もそうですけど)のフォワードカーブは長い間、「原油余り」を反映した大順鞘で推移してきましたが、減産発表を受けてフォワードカーブ形状に大きな変化が現れました。2016年11月30日のOPEC総会に先立って9月28日にアルジェリアで行われたOPEC臨時総会において減産合意が行われ原油価格は急騰したものの、WTIのフォワードカーブ形状に大きな変化は現れませんでしたが、11月30日の総会で減産が確定すると、一気にフォワードカーブが変化しました(2017年7~8月限以降が一気に逆鞘化しました)。さらに、12月10日にロシア等の非OPECの減産が決まると、逆鞘幅が拡大しました(下図)。世界全体の消費量よりも世界全体の生産量が減れば、いずれ在庫が減少し、需要が逼迫するであろうと市場参加者が予想しているのでしょう。

2016年8月~12月のOPEC減産関連イベント前後でのWTI原油のフォワードカーブ

フォワードカーブについて若干説明を加えておきます。期限が短い先物価格から、期限が長い先物価格で、横軸を期限、縦軸を価格としたグラフのことをフォワードカーブといいます。筆者の場合は期限が一番短い先物を基準にしてグラフ化してます。例えば1月限先物が50ドル、2月限先物が51.3ドル、3月限先物が52.4ドルだったら、1月を基準にすると0、1.3、2.4というふうになるわけです。期限が長い先物ほど価格が長いことを「順鞘」と言います。順鞘は「将来の価格が高い」という見方をしがちですが、「現在の価格+保管費用」という見方をしたほうが良いでしょう。なお、逆鞘の場合は「保管費用」では説明することができません。この場合はコンビニエンスイールドという概念が用いられます。例えば非常に大掛かりな設備で一旦動かしたら容易に止めれないような設備の場合、原料が枯渇すると大きな損害が発生してしまいます。このため「多少、割高でも在庫を持っていたほうがマシだ」という経営判断がなされる場合があります。こういう考えを数値化したものがコンビニエンスイールドです。順鞘の幅は保管費用(教科書ではキャッシュ&キャリーとか言います)の観点から無限に広がりませんが、逆鞘幅は理論限界がありません。砂漠で干乾びそうなときの「水の値段」のように、どこまでも上昇する可能性があります。古い相場格言で「逆鞘売るべからず」というのがあります。もし原油が大逆鞘になっても安易に売るのはやめましょうね。

ところで、OPECと非OPECの減産計画をよ~く読むと、減産するのは「2017年1月以降」なんですよね。ということは2016年11~12月は「今のうちに売りまくれ」という行動を取ってもおかしくない。ロシアの場合は「2016年11~12月の生産量を基準に削減」と言ってるわけなので11~12月に増産しておいてから、そこから30万バレル減らせば、実質の減産量を抑えることができるはずだ、という行動をしてもおかしくはないし経済合理的ともいえる。

とすると、「2016年中に全力で原油を出荷したい」国が多くなるはずなので、原油タンカー(VLCC)のスポット市場がタイトになり、運賃が上昇するんじゃね?と筆者は考えました。Plattsでちょっとだけペルシャ湾から日本へのVLCCのレートが無料で見れますが、9月から12月にかけて3倍近く高騰してますな。こりゃびっくり。なお、正確なレートを知りたい人は日本海時新聞のマリナビがオススメです(有料ですが、ほぼ毎日更新されますのでExcel等に手入力してチャートを描けます)。日本海時新聞電子版2016年12月16日によると、「北半球の冬場のエネルギー需要に加えて来年1月開始のOPEC減産を前にサウジアラビアなどが出荷量を高めている可能性がある」とのこと。なるほど、、、筆者の読みは正解かな?

話が少々脱線しましたが、各種報道と、WTI原油先物のフォワードカーブ形状とVLCCのレート(船の運賃)から筆者が予想したことは、
・OPECやロシアは2016年11月~12月は出荷量を増やしている可能性が高い(2017年第1四半期はまだ余剰分が残ってる可能性が高い)
・2017年1月以降は約束通り出荷量を減らすだろうと市場では予想されている(現時点では)
・その結果、2017年夏頃には原油市況は「やや逼迫」状態となるだろうと予想されている(逆鞘になっている)
というところではないかと思います。

じゃあ実際のトレードはどうしたら良いか?というとこれは難しい。2016年後半に駆け込みで出荷された原油がVLCCに山積みになって海に浮かんでいるというのが2016年12月の状況だと思うのですよ。とすると、これらが消費されるまでは「原油は過剰」な状態になるのではないかと(つまり順鞘が続くのではないかと)。とすると、ETF/ETNはロールオーバー損が積み重なるので、上値が重い状態が続く可能性が高いだろうから、買ったまま粘ると減価でやられそう。やるとしたら長期保有は避けて突っ込み買い、噴き値で売り、という感じかなあ。とするとWTI原油のCFDかドバイ原油先物で小玉で回転させるのが効率よいかな?という感じ。

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