米国個別株CFDを売買できる証券会社の比較
米国株を特定口座で取引できる証券会社が増えてきました。米国市場の現物株を買うことに関しては既に門戸は開かれており、ネット証券のそこそこ安い手数料で米国株(現物株)を買うことができます。
しかしながら、本稿執筆時点(2021年4月)において、米国株の信用取引ができる日本の証券会社はありません。このため現物株しか扱えない証券会社では、米国株の下げを狙うトレードを行うことができません。
日本証券業協会で「外国上場株式の信用取引制度に関するワーキング・グループ」が発足され、外国上場株式の信用取引を取り扱うにあたっての制度整備に関する検討が開始されましたが、実現までは時間がかかりそうです。
一方、FXと同じような仕組み(売り買いの価格差を差金決済できる取引)の、米国株CFD取引が可能な証券会社を使えば、実質的に米国株の空売りが可能です。筆者の調査範囲では日本で正式にサービス提供している証券会社は、サクソバンク証券株式会社、IG証券、GMOクリック証券の3社です。この3社であれば米国株の値下がりで利益を得るようなトレードが可能であり、もちろん値上がりで利益を得られるトレードをレバレッジをかけて実施することもできるようになります。
項目 | サクソバンク証券株式会社 | IG証券 | GMOクリック証券 |
---|---|---|---|
手数料 | 取引金額×0.2%(最低5ドル)(※1) | 2.2セント/株(最低16.5ドル)(※1) | 無料(※2) |
金利コスト(※3) | 買いはオーバーナイト金利支払い | 買いはファンディングコスト支払い | 買いは金利調整額の支払い |
リアルタイム価格(※4) | 有料 | 有料 | 無料 |
クイック入金 | 可 | 可 | 可 |
口座維持手数料 | なし | 半年不稼働の場合月550円 | なし |
取り扱い銘柄数 | 米国は約6000銘柄 | 世界約12000銘柄 | 主要銘柄のみ |
スマホ対応 | Android、iPhoneに対応 | Android、iPhoneに対応 | Android、iPhoneに対応 |
口座開設にマイナンバーは必要か(※5) | 必要 | 必要 | 必要 |
その他の特徴 | FX、貴金属、外国株式オプションの取り扱いあり | ノックアウトオプションの取り扱いもある | 証券口座と銀行口座連携で総合資産管理できる |
金融商品取引業の登録(※6) | 関東財務局長(金商)第239号 | 関東財務局長(金商)第255号 | 関東財務局長(金商)第77号 |
※1 サクソバンク証券株式会社、IG証券は証券取引所の最良価格で取引できるが手数料がかかる。
※2 GMOクリック証券CFD提示する価格でしか取引できないが手数料が無料。
※3 買いポジションの持ち越しはどの取引会社でも金利コストの支払いとなる。
※4 取引所価格で売買できる証券会社ではリアルタイム価格配信料が必要。
※5 日本で正式に営業している金融商品取引業者は、税務署に支払い調書提出のために、必ずマイナンバー提示を求める。
※6 日本で営業を許可されている取引業者は金融庁で確認できます。
サクソバンク証券株式会社は聞きなれない名称ですが母体はデンマークのオンライン銀行(1992年に為替ブローカーとして設立)であり、海外へ手広く金融サービスを提供しています(非上場企業)。もちろん日本で正規に営業することを認められた証券会社です。
IG証券は聞きなれない名称ですがイギリスの金融サービス企業IGグループ(1974年設立)の日本法人です。IGグループはFTSE250種総合株価指数の採用銘柄となっている大手企業です。IG証券はもちろん日本で正規に営業することを認められた証券会社です。
GMOクリック証券は、東証に上場されているGMOフィナンシャルホールディングス傘下の証券会社です。証券、FX、CFD口座間で即座に資金移動できるので昼間は日本株のデイトレ、夜間はCFDトレードというように資金を遊ばすことなく有効に使えるメリットがある証券会社です。GMOあおぞらネット銀行との連携も可能です。
米国株CFDを使えば、米国株の空売りと同じような損益を生むトレードが可能になるわけですが、注意点を一つ。アメリカ市場では企業買収は日常茶飯事で、小さい企業は勿論のこと巨大企業でさえも突然TOB(株式公開買い付け)されることがあります。例えば株価20ドルの銘柄をCFDで空売りしているときに、TOBのニュースで50ドルになったような場合、一撃で破産するレベルの大損を食らう可能性があります。滅多にないかもしれませんが個別株の空売りは、リスクが極めて高いことを十分理解しておく必要があります。
最後にセミプロ向けの情報を少々。米国の個別株オプションを本格的に売買したい方(naked WritingとかTarget buyingしたいようなマニアな人)は米国系証券会社に口座を開く必要があります。10年くらい前はネットで探した米国系証券会社に英語で問い合わせすると日本在住の日本人でも口座開設させてくれたところがあるのですが、最近は殆ど駄目になってしまいました。現在でも口座開設できるのはinteractive brokersくらいだと思います。ここは日本口座と米国口座に分かれているので興味ある方はご自分で問い合わせてみて下さい(日本法人に問い合わせても大丈夫です)。米国口座を開けば米国株の空売りもオプション取引もできます。元々マーケットメーカーとして発展した老舗企業であり、上場会社です。殆ど誰も売買していない日本株の個別株オプションのマーケットメイクなども行っているようです。ちなみにSBI証券や楽天証券で米国株を買った場合は、interactive brokersに取り次がれています。しかし、言語の壁(英語)と、確定申告の手間を考えると、個人投資家が直接interactive brokersの米国口座を開設するのは、ハードルが高いと思います。私は口座開いてありますけど確定申告が超面倒なのでたまにしか使ってないです。PUTオプション売って権利割当されて買った株をカバードCALLで現物渡して決済した場合の損益の計算をしたりするのが本当に面倒くさすぎる。
とまあ、その辺まで考慮すると、米国株CFDの取り扱いがあって日本で正式に営業している証券会社のCFDを利用するのが最もお手軽と言えると思います。ただしCFDの場合は金利コストがけっこう大きいので長期トレードは不利な点は理解しておきましょう。ボラが高い銘柄(よく動く銘柄)の短期トレード(売り、買いどちらとも)に特化するのであるならば米国株CFDは強力なツールとなりえると思います。サクソバンクではイフダンOCO注文ができるので米国市場がよく動く時間に注文を出して寝てしまう(寝てる間に新規買い注文成立、さらに決済売りまで成立してしまう)ような使い方もできます。なお、IG証券では新規のポジションを保有するためのOCO注文はできません。
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