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アメリカの原油生産量がようやく減少に転じた

サウジアラビアやロシアの場合は国策として原油生産量をコントロールできますが、米国の場合は民間企業が生産者であるために価格カルテル的な手法(皆で申し合わせて減産)は難しいという問題がありました。しかしながら、さすがに価格下落に耐え切れなくなり多くの民間企業が減産するようになり、ようやく全米合計での原油生産量は減少に転じました。

米国の原油生産量推移

減ったとは言っても、2010年頃と比べて生産量は2倍に増えているわけなので新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による需要減を埋め合わせることができるか疑問なレベルではあります。

WTI原油受け渡し地であるオクラホマ州クッシングの在庫は、まだまだ高水準ですが僅かながら減少に転じたのは原油価格に対しては好材料と言えますね。

クッシング在庫(2020年5月13日発表)

WTI原油先物は一時マイナス価格となるなどの大波乱を演じましたが、そこそこ落ち着きを取り戻しつつあります。下図は過去の暴落と今回の暴落を比較するために作成したチャートですが、日柄的に見ても、そろそろ最悪期を脱したかという感じに見えます。

原油下落の様子。過去との比較

原油先物のフォワードカーブ(期限の短い先物を基準に、期限の長い先物価格を繋いだチャート)を見ると、おそろしいほどの順鞘(コンタンゴ)が縮小してきて、コンタンゴの幅の小さい状態まで回復しているのがわかります。ETF等のロールオーバー時の減価の度合いは今後改善されてゆくと考えられますが、そうは言ってもまだコンタンゴなので長期買い持ちは不利な状況には変わりません。

WTI原油先物のフォワードカーブ

コロナの感染リスクを減らすためには人間に近づかないことが必要です。このため公共交通機関は使わないけれども自動車で移動する、というニーズは確実に存在します。Appleが期間限定で移動傾向レポートを無償で提供しており、これによればアメリカにおける自動車の移動アクティビティは公共交通機関を上回る勢いでけっこう回復していることが確認できます。ちなみに移動傾向レポートはアメリカのみならず世界中の傾向を見ることができるのでいろいろな地名を入れていろいろ試してみると楽しいよ。

原油1バレル(42ガロン)から、ガソリンは19~20ガロン、中間留分(ディーゼル燃料とかヒーティングオイルとかジェット燃料)は11~12ガロン生産されます。つまり、車社会のアメリカにおける原油消費量を予想する上で、ガソリンの需給動向の監視は重要です。

アメリカの移動傾向レポートを見る限りは自動車移動量はかなり回復していることがわかります。じゃあガソリン価格はどうでしょうか。下図は2020年7月限のガソリンクラックスプレッド(ガソリン先物と原油先物の価格差)ですが、クラックがマイナスになるほど叩き売られた後、大幅に戻していることがわかります。つまりガソリンの需要はかなり回復傾向にあることが伺えます。

アメリカのガソリンのクラックスプレッド(7月)

ガソリンの在庫量の推移を見ると確かに減ってますね。

アメリカのガソリン在庫推移(2020年5月13日発表)

しかし、単純に喜ぶことはできません。製油所の稼働率はまだまだかなりの低水準のまま。つまり、ガソリンの需要が回復したというよりも、生産量が減っているので在庫が減ったという見方をしたほうが良いでしょうね。

アメリカの製油所稼働率推移(2020年5月13日発表)

当面は、移動傾向レポート、ガソリン在庫や製油所稼働率、クッシング在庫等から目を離せませんね。筆者は戻り売り目線で見ていたのですが、原油のコンタンゴがかなり縮小してきた様子を見ると売るのは怖くなり、押し目で強気ポジションを作るかどうか思案中です。

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