2039「NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ベア ETN」の償還価額を計算してみる
2016/10/21
近年、「対象物が値下がりすると逆に値上がりするETFやETN」が取引できるようになってきました。1357「NEXT FUNDS 日経ダブルインバース上場投信」は大人気ですし、2039「NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ベア ETN」も地味ながらも根強いファンがいるようです。
本稿では東京商品取引所(TOCOM)のドバイ原油価格から、原油ベアETN(2039)の償還価額を計算してみることにします。2039のパンフレットを読むと「指数の変動率が、日経・東商取原油指数の前日比変動率(%)の-1倍となるように計算された、日経・東商取原油インバース指数を連動対象とします」と記載されています。「日経・東商取原油インバース指数」は次式で計算されます。
当日の指数値= 前日の指数値 ×(1 -1倍× 日経・東商取原油指数の前日比変動率)
結局、どういう動きをするのかというと、東京商品取引所の原油先物が前日比で5%上昇したら、指数は5%下落しますよ、ということを言っています。逆に東京商品取引所の原油先物が前日比で5%下落したら、指数は5%下落しますよ、ということです。2039の価格は指数に応じて動くように設計されているので東京商品取引所の原油先物が前日比で5%下落したら2039は5%上昇することが期待されます。市場ではマーケットメーカーが取引所価格を「償還価額」に近づける努力をしていますので、取引所価格は、概ね、償還価額、すなわち、「日経・東商取原油インバース指数」に応じた価格になります。
実際の価格データで計算してみましょう。既に2038で同様の計算を行いましたので全く同じ期間で計算してみます。下表は2016年4月15日から2016年5月31日の2039の償還価額、東京商品取引所(TOCOM)の原油先物の価格、TOCOM原油先物の変動率のマイナス1倍、筆者が計算した償還価額です。NYMEXのWTI原油先物と異なり、TOCOM原油先物の取引中心となっているのは「もっとも期限が長い先物(と言っても半年先です)」なので注意が必要です。
「当日の償還価額」は、野村證券発表の「前日の償還価額」を基準に計算します。4/18の計算をしてみます。TOCOM原油の2016年9月限は、4/15の終値が28310円、4/18の終値が25750円でした。25750÷28310=0.90957ですので、変動率は1-0.90957をパーセント表示することで、マイナス9.043%であることがわかります。これのマイナス1倍に応じて変化するので、プラス9.043%となります。前日の償還価額が15835円ですから、本日の理論値は15835×(1+0.09043)=17266.95円、となります。翌日の4/19も同様にして計算してゆくことができます。
少々難しいのがロールオーバーです。日経・東商取商品指数算出要領によると、第5営業日から第9営業日にかけて2割ずつロールオーバーするため、5月の第5営業日である5/11は、2016年9月限の変動率の0.8倍と、2016年10月限の変動率の0.2倍を加えたものを、変動率として採用します。つまり、(-3.750)×0.8+(-3.713)×0.2= -3.742%を用います。前日5/10の償還価額が15414円ですから、5/11の値は15414×(1-0.03742)=14837.21円となります。5/12は2016年9月限の変動率の0.6倍と、2016年10月限の変動率の0.4倍を加えたものを、変動率として採用します。そして5/17以降は2016年10月限の変動率を用いて計算するわけですね。
下図は2014年9月から2016年5月までの2039の償還価額とTOCOM原油先物価格の比較です。きれいな逆相関になっている様子が分かります。2016年1月半ば頃に凄い勢いで原油が下落したときの2039の急激な上がり方は見事なものです。2014年9月から2016年1月半ばにかけてTOCOM原油が1/3になり、2039は、ほぼ3倍になっています。原油の下落に賭けた方は大きな利益を手にされたことでしょう。
念のため筆者は2014年9月まで遡り、野村證券発表の償還価額と、上述の方法で計算した価格を比較しました。その結果は下図に示すようにほとんど一致しました。