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2038「NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETN」の償還価額を計算してみる

2016/06/28

昨年から2038「NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETN」が人気になっておりますが、仕組みを誤解している方が多いようです。実際の数値を挙げながら、どのような値動きをするのか考えてみようと思います。2038は東京商品取引所(TOCOM)の原油価格の動きによって「幾らになるべきか(償還価額)」を一意に計算できます。

2038に対する、よくある誤解の例:
×「原油先物が上昇すれば、2038は2倍の速さで上昇する」
×「下落が速いから上昇も速い。5000円くらいまで戻る」
×「1699を100万円買うのと、2038を50万円買うのは、同等の損益だ」
いずれも誤りです。デイトレに限れば、概ね正解ですが、翌日以降に持ち越す場合は、全く別の挙動を示します。

2038の説明を読むと「日経・東商取原油レバレッジ指数への連動を目指す金融商品」と記載されています。「日経・東商取原油レバレッジ指数」は次式で計算されます。

当日の指数値=前日の指数値×(1+2倍×日経・東商原油指数の前日比変動率)

原油指数の前日比変動率と書いてあるので分かりづらいのですが、東京商品取引所の原油先物が前日比で5%上昇したら、指数は10%上昇しますよ、ということを言っています。逆に東京商品取引所の原油先物が前日比で5%下落したら、指数は10%下落しますよ、ということです。そして、2038の価格は指数に応じて動くように設計されているわけだから、東京商品取引所の原油先物が前日比で5%上昇したら、2038は10%上昇することが期待されます。市場ではマーケットメーカーが取引所価格を「償還価額」に近づける努力をしていますので、取引所価格は、概ね、償還価額、すなわち、「日経・東商取原油レバレッジ指数」に応じた価格であると考えてよいです。

実際の価格データで計算してみましょう。下表は2016年4月15日から2016年5月31日の2038の償還価額、東京商品取引所(TOCOM)の原油先物の価格、TOCOM原油先物の変動率の2倍、筆者が計算した償還価額です。NYMEXのWTI原油先物と異なり、TOCOM原油先物の取引中心となっているのは「もっとも期限が長い先物(と言っても半年先です)」なので注意が必要です。

2016年4月~5月におけるTOCOMドバイ原油価格変動から原油ダブルブルETN(2038)の計算結果(表)

「当日の償還価額」は、野村證券発表の「前日の償還価額」を基準に計算します。4/18の計算をしてみます。TOCOM原油の2016年9月限は、4/15の終値が28310円、4/18の終値が25750円でした。25750÷28310=0.90957ですので、変動率は1-0.90957をパーセント表示することで、マイナス9.0423%であることがわかります。これの2倍に応じて変化するので、マイナス18.085%となります。前日の理論値が850円ですから、本日の理論値は850×(1-0.18085)=696.3円、となります。翌日の4/19も同様にして計算してゆくことができます。

少々難しいのがロールオーバーです。日経・東商取商品指数算出要領によると、第5営業日から第9営業日にかけて2割ずつロールオーバーするため、5月の第5営業日である5/11は、2016年9月限の変動率の0.8倍と、2016年10月限の変動率の0.2倍を加えたものを、変動率として採用します。つまり、7.499×0.8+7.426×0.2=7.484%を用います。前日5/10の理論値が824円ですから、5/11の理論値は824×(1+0.07484)=885.6円となります。5/12は2016年9月限の変動率の0.6倍と、2016年10月限の変動率の0.4倍を加えたものを、変動率として採用します。そして5/17以降は2016年10月限の変動率を用いて計算するわけですね。

下図は2014年9月から2016年5月までの2038の償還価額とTOCOM原油先物価格の比較です。この期間にTOCOM原油は半分程度にしかなっていませんが、2038は僅か1/10以下という酷い値段まで下がっています。これは直感に反する結果です。本当に正しいのでしょうか。
2014年9月~2016年5月におけるTOCOMドバイ原油価格と原油ダブルブルETN(2038)の重ね描きチャート

筆者は2014年9月まで遡り、野村證券発表の償還価額と、上述の方法で計算した価格を比較しました。その結果を下図に示します。2038の価格の下がり方が原油先物の値下がり速度に比べ著しく速いため、2038の取引価格がおかしいような気分になりますが、そうではありません。商品設計通りの動きをしていることが分かりました。

野村證券発表の原油ダブルブルETN(2038)償還価額と、筆者計算の償還価額の重ね描きチャート

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